ニュース

生物地球学部 生物地球学科でおこなわれている、様々な講義・野外実習・各研究室でのイベントを紹介しています。随時、記事がアップされますので楽しみにしてください。

題目:兵庫県のマツ枯れ被害後の林分の植生回復および管理手法に関する景 観生態学的研究  

講演者:藤原道郎さん(姫路工業大学・兵庫県立淡路景観園芸学校)  

講演概要:兵庫県淡路島は1)島嶼という基本的には閉鎖された系である,2)過去のマ ツ枯れが激害であったにも関わらず、現在でもマツ林が比較的まとまって残っ ている部分もある,3)適度な面積(593km2)である,という理由から,マツ枯 れ被害の時空間的推移を明らかにするには適している.そこで、兵庫県淡路島 を中心として,より広域な兵庫県全体も加えた異なるスケールでの解析を試み た.すなわちa)兵庫県におけるマツ枯れ被害量の推移,b)淡路島におけるマツ 被害量の推移およびマツ枯れ後の植生変化,c)連続した斜面でのマツ枯れ被害 の時空間的推移とマツ枯れ後の森林動態である.その結果,マツ枯れ被害林の空間的な連鎖性が認められた.また, 1970-80年代のマツ枯れ被害の甚大な時期には調査地全体で裸地が多く,マツ 枯れ被害後,マツ林の再生が可能な立地が多かったと推定されたが,現在のマ ツ枯れ被害林の多くは広葉樹林へと変化すると推定された.すなわち過去のマ ツ枯れと現在のマツ枯れでは状況が異なっており,今後,過去にマツ枯れ経験 をしたマツ林の研究が重要であると考える.一斜面においては斜面下部ほどマ ツ枯れ被害が大きいことが確認されたが,土壌条件およびマツの光合成特性か らも支持された.なお,本研究は平成14年度兵庫県立淡路景観園芸学校共同研究「兵庫県の里 山におけるマツ枯れ被害後の林分の植生回復および管理手法に関する研究」の 一部である.この共同研究はこれまで行なわれることのなかったマツ枯れ現象 を複合的に捉えることを試みたもので,マツ枯れ被害林の種類組成・分布やそ の後の植生変化を解析する植生・生態グループ,立地環境やマツの生理的指標 から解明する環境要因グループ,マツ枯れ被害林を視覚的にどう捉えているの かを把握する景観評価グループ,マツ枯れ被害を広域的に捉える広域解析グル ープから構成された.共同研究全体の紹介も行なう.

日時:7月3日(木)1640-1740  

場所:21号館1階会議室