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生物地球学部 生物地球学科でおこなわれている、様々な講義・野外実習・各研究室でのイベントを紹介しています。随時、記事がアップされますので楽しみにしてください。

下記の通り、第94回生地談話会を開催致します。  

今回の演者は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 の池谷 祐幸さんです。  

演題:  
史前帰化植物と野生植物の面倒な関係 ~果樹を例にして~  

演者:  
池谷 祐幸 (国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構  
果樹研究所 品種育成・病害虫研究領域 上席研究員)  

内容:
近代以降に渡来した外来生物の野生化や近縁な野生生物への遺伝的な影響については多くの例が知られている。これに対して、史前帰化植物のように近代以前に渡来した植物は、通常は外来生物とは見なされないため余り研究が進んでいない。例えばナシやモモは日本各地に野生個体が見られるが、これまでの知見では、十分な実証的な研究がないままに古い時代の帰化植物の野生化と見なされてきた。そこで、この2種の果樹のさまざまな栽培個体および近縁な野生植物を材料として、それらの遺伝的関係の解析を進めてきた。この研究は、栽培や品種の歴史の解明にも繋がるため、生物学のみならず農学や人文科学にも資することができる。 また、こうした近縁な植物群を遺伝学的に解析するためには、多数の遺伝子と個体を使った集団遺伝学的解析が不可欠となる。よって、各20種のマイクロサテライトマーカーの多型を調べてベイズ法により解析し、集団の遺伝的構造を推定した。 その結果、ナシにおいては、野生個体は日本や中国の栽培品種に遺伝的に類似し、前者が真の自生ではないこと、その一方では、真の自生植物であるミチノクナシと広範囲に浸透交雑を起こしていることなどが判明した。またモモにおいては、野生個体は古い在来栽培系統や花モモと遺伝的に類似するが、近代の栽培品種とは異なっており、モモの栽培史を検証することが出来た。 これらの結果は農学的には興味深いものも多いが、自生植物と外来植物の境界が一層曖昧になったので、保全生物学的には面倒な結果かも知れない。 ところで、このような研究を行っていると農業史と無縁ではいられないが、19世紀以前の果樹栽培史はほとんど研究が進んでおらず不明な点が多いため、そうした問題へも興味を持っている。



日時:平成27年12月21日(月)16:50~17:50  
場所:21号館1階 会議室  


学内外どなたでも自由に参加できます。皆様のご来聴をお待ちしています。  
事前申し込みは必要ありません。当日、会場へお越しください。