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生物地球学部 生物地球学科でおこなわれている、様々な講義・野外実習・各研究室でのイベントを紹介しています。随時、記事がアップされますので楽しみにしてください。

第43回生地談話会のご案内をいたします.今回は生地院生の高橋和成さんによる変形菌の話です.変形菌は南方熊楠に例に見られるように,博物学の本道ともいえる研究テーマです.

題目:変形菌にも結実季節性がある
講演者:高橋和成(岡山理大大学院D1)

講演概要: 変形菌は菌類の仲間にされていましたが、現在は原生生物の仲間入りをしています。何だか住所不定の不思議な生物です。森林の枯死木や落葉などの植物遺体の腐植中で粘菌アメーバや変形体で栄養増殖し,数mm程度の微小な子実体を結実します。多くの種が腐朽木を生活の場にしていますが、森林内で変形菌が一年を通じてどのように消長するか、出現種の季節的な変化を定量的に調べた研究は限られています(1964浜島、1995高橋)。ここでは、新見市羅生門で調査してきた2005年3月~2006年2月までのおよそ月1回の定点調査で明らかになってきた変形菌の季節的発生についてご紹介します。変形菌の発生は5月から増加し、梅雨明け後の7月から8月に出現種数と発生量が年間で最大になりました。10月から11月がこれにつぎ、あとの季節は著しく少なくなっていました。初夏には、コムラサキホコリやツノホコリなど、梅雨明け後の高温多湿な時期にはタチフンホコリ、サビムラサキホコリ、チャコムラサキホコリなどの発生が爆発的に見られました。しかし、冷涼になる秋にはエツキケホコリ、ルリホコリが優占しました。さらに、晩秋からの極めて寒冷な時期にはキララホコリが大量に出現しました。一方、通年で観察されるマメホコリもありましたが、発生量は秋により多くなっていました。こうした消長は、気温の変化に関連して変動しているようですが、春雨、梅雨、秋雨などの多湿な環境条件と強く関連しています。林床における変形菌の役割は何でしょうか、それが今後の大きな研究課題です。  

日時:7月 6日(木)16:40-18:00
場所:21号館1階22114教室