研究分野は動物生態学です。私の興味は野外の動物たちが、どのように生きているのかを知ることです。特に一生のうちに、いかに成長し繁殖をするのかという生活史戦略や、個体間の社会的な関係について、魚類を対象に研究しています。大学院修了後は、プロジェクト研究に関わる機会を得て、湖沿岸の生態系(食物網)構造の解明や、新潟県佐渡島でのトキの野生復帰に関わる水田生態系の評価に関する研究に携わりました。
近年は、学外の研究者とともに共同研究に取り組む機会も増えています。例えば、生きた二枚貝に産卵するタナゴというコイ科淡水魚において、どのような状況や仕組みで2種間の交雑が起こり雑種が生じるのかを解明したいと考えています。また、鳥類標本の羽の安定同位体を分析から、食性や渡りを探る研究などを進めています。
研究者になるまでの経緯を深堀り!
潜水すると魚たちとの距離が縮まり、新しい世界が拓けた気がしました。
大学3年生も終わりになると、どの研究室で卒業研究をするのかを決めるわけですが、野外調査による研究がやりたいと考えていました。動物の繁殖戦略に興味があったので、動物生態学の研究室を選びました。指導教員は、野外の潜水調査で魚類の行動や生態について研究していたため、私も魚類を対象に研究することになりました。もし、鳥類や哺乳類を対象にしていた教員であれば、魚類はやっていなかったかもしれません。繁殖シーズンは野外調査の毎日で、潜水(スキューバダイビング)によって、各個体の求愛や産卵行動を調査していました。潜水すると魚たちとの距離が縮まり、行動が間近に観察でき、新しい世界が拓けた気がしました。
大学院終了後、先輩の研究者から声をかけてもらい、全く異なる分野の研究プロジェクト参加する機会を得ました。そこで新たな研究手法を習得出来たことに加え、研究に対する視野や対象分野も広がり、今でも貴重な財産となっています。同じような興味を持つ共同研究者と出会う機会を得られて、これまで研究を続けられてきましたが、研究者は自分の興味に沿って研究テーマを自由に決められる点が、最大の魅力ですね。
研究者ってどんな生活をしているの?
ディスカッションする中で、新しいアイディアが生まれることも
出勤して研究室に来ると、まず豆を挽いてコーヒーを淹れます。優雅な朝のひとときを過ごすことはできず、メール連絡を中心とした学内や学外の業務を進めます。講義や実習がある日は、それらにかける時間が多くなります。学生(ゼミ生)がいる部屋は研究室から少し離れているため、時間ができたら様子を見に行き、ゼミ生と研究の進み具合や今後の方針について話をします。解析データを見ながらディスカッションする中で、新しいアイディアが生まれることもあります。自身の研究は、それらの間隙を縫って進めるしかありませんね。夕方は大体定時に退勤し、家族揃って夕食を取るようにしています。日々のささやかな楽しみは寝る前の読書ですが、最近はあまり時間が確保できておらず、未読の本が増殖中です。
研究室について
研究室はどんなところ?
研究室の学生や大学院生は、毎週1回、全員が集まって研究の進捗や発表練習などをする「ゼミ」に参加します。順番に各自の研究の状況を報告してもらい、今後の方針を決めたり、内容についてディスカッションする機会となっています。普段は、各自の野外調査や実験のスケジュールに合わせて研究を進めます。
卒業研究の進め方ですが、それぞれの学生は興味や関心が様々ですので、まず希望する方向性(研究分野や対象生物)を相談します。多くの場合は「研究」から隔たりがありますので、各自に関連研究などを調べてもらい、目的や方法の選定などを進め、卒業研究のテーマとして適切な段階まで内容を練り上げます。基本的に、教員が持つテーマから選んでもらうような方法は取っていませんので、自主的に研究テーマを設定することが求められます。
当ゼミを希望する学生へ
自分が興味を持っている分野や生き物について、下調べをしておいて下さい。図鑑や動画はきっかけとしては良いですが、やはり「浅い」です。一般向けの科学書や専門書を読んで、その現象の「意味」を考えて見て下さい。卒業研究では、文章を読んで必要な情報をまとめたり、自身の考えを文章で表現することになります。それには読書が役立ちますので、楽しみながら長文を読む機会を持って欲しいです。

武山 智博魚類生態学研究室
2002年12月大阪市立大学大学院理学研究科生物地球系専攻後期博士課程修了、博士(理学)取得。京都大学大学院理学研究科(京都大学生態学研究センター)研究員、新潟大学大学院自然科学研究科研究員、大阪市立大学大学院理学研究科特任講師などを経て、2013年4月に岡山理科大学生物地球学部生物地球学科に着任。2025年4月より現職。


