最近の出来事2016



2016年12月28日 年末の御挨拶

 大学も仕事納めの日となりました。2016年は、年頭のSSH(岡山理科大学付属高校)からはじまり、岡山理科大学プロジェクト研究推進事業と文部科学省私立大学ブランディング事業の獲得、毎年のモンゴル・ケニア(科学研究費補助金事業)での野外調査、6月の古生物学会と9月のモンゴル国際ワークショップ参加(院生発表;科学研究費補助金事業)、今年から開始した古生物学実習の担当、カリキュラム編成の学芸・教職のチェック、卒論の論文化と一部投稿開始、様々な共著論文のチェック、新たな共同研究の立ち上げ等、閏年だから4年に1度だから、と自分に言い聞かせた1年でした(笑)。
 来年は、私立大学研究ブランディング事業を中心とした、新たな機器導入やゴビ砂漠での学生指導や研究、モンゴル人大学招聘など、研究室や学科の枠を超えた、全学的な活動へ移行していきます。そしてついに、生物地球学科の恐竜・古生物コースを目指して入学してくれた学生さんが卒論生となり、本格的な研究が始まります。研究室が掲げる、地質学・古生物学・化石プレパレーションといった領域を大切にしながら、来年もがんばっていきます。来年初頭は、修論卒論を見ながら、紀要論文のチェックと大学院生による口絵投稿などで始まる予定です。実習授業も頑張ります。

 最後に、学内外の関係する皆様、本当にお世話になりました。特にIPG(モンゴル科学アカデミー)のDr. Tsogtbaatar所長を中心としたスタッフの皆様、なぎビカリアミュージアムの柴田館長や江見副館長を中心としたスタッフの皆様、北海道大学博物館の小林准教授と研究室学生諸氏には、研究と教育に対するご支援、ご指導、ご協力を頂戴しました。この場を借りてお礼申し上げます。また来年もよろしくお願い致します。


2016年12月3日 年末恒例の合同ゼミ開催

 本研究室で昨年より恒例となっている年末の合同セミを、基礎理学科の藤木先生・生物地球学科の矢野先生と伴に実施しました。藤木先生のご専門は花粉学、矢野先生のご専門は植物形態学であり、本研究室とは異なりますが、異種格闘技戦のように異分野で合同開催すると、これまで見えなかったものが見えてきます。両先生方から、とても参考になるコメントも頂戴でき、研究室学生も卒論・修論の完成へ向け励みになるでしょう。本研究室からは、以下のタイトル発表を実施しました。

・ゴビ砂漠に分布する上部白亜系のESR特性
・ゴビ砂漠南東部Bayshin Tsav に分布する上部白亜系の古流向復元
・石英のCL特性を用いた化石産地同定法の開発
・軟体動物化石を用いた中新統吉野層の古環境復元


2016年12月2日 古生物学実習(3年生)化石の型取り ~シリコン塗布~

 化石の型取り作業は、シリコンの使用に入りました。化石表面へのシリコン塗布により、シリコン型を作成していきます。学生にとっては初めての作業でもあり、空気が入らないよう苦労しながらシリコン塗付をしていきました。これらの作業を、『お好み焼きのオーロラソース風』か『パンケーキ上の蜂蜜風』と表現するのかで、学生のリアクションに違いが出て新鮮でした(苦笑。


2016年11月28日 私立大学研究ブランディング事業への採択

 本研究室も参加する、本年度の私立大学研究ブランディング事業(岡山理科大学【恐竜研究の国際的な拠点形成-モンゴル科学アカデミーとの協定に基づくブランディング-】)に採択されました。本事業は学長のリーダーシップの下、全学的に取り組む研究に対し、大型助成を受けるものであり、本学では『恐竜の国際研究教育拠点をつくる』、との内容が採用されたことになります。今後、ゴビ砂漠での現地調査や年代測定、化石研究など、学内外の先生方と協力して多角的な恐竜研究を推し進めていく予定です。生物地球学科の恐竜・古生物学コースに加え、全学的にモンゴルの恐竜化石研究を進めることとなり、これから更に古生物学的な研究教育が充実していくことでしょう。

大学のプレス発表資料 http://www.big.ous.ac.jp/~noumi/dinosaur/press20161126/release20161124.pdf
研究グループのホームページ http://www.big.ous.ac.jp/~noumi/dinosaur/index2.html


2016年11月4日 古生物学実習(3年生)化石の型取り

 秋学期から担当している化石プレパレーション実習の続きです。これまでクリーニングを行ってきた化石の型取りを始めています。まずは化石を粘土に埋めて、型の土台を作成します。次のシリコンがけのため、丁寧に土台を作成する必要があり、粘土まみれになりながら、頑張っています。


2016年10月14日 古生物学実習(3年生)秋学期担当スタート

 10月14日から秋学期中の古生物学実習担当分がスタートしました。私はプレパレーターをしていたことがあるため、化石のクリーニング、型取り、キャスト作成、色塗りの実習を担当します。今年はなぎビカリアミュージアムより提供を受けている標本を使用します。一日かけてクリーニングを実施しましたが、まだまだ足りない様子です。来週は巡検ですが、年末へ向けて化石プレパレーションを体験してもらおうと思います。

【写真上】実習を履修する学生たちです。
【写真中】プラモデル製作にも使用されるデザインナイフを使っています。
     色々試した結果、クリーニングに使用しやすい(どんなマトリクスにも対応できる)と思っています。


2016年10月4日 国際シンポジウム(モンゴル)での成果発表とゴビ砂漠調査(巡検)

 2016年9月22日から28日にかけて、モンゴル国ウランバートル市にて開催されたInternational symposium of "The 70th Anniversary of Mongolian Paleontological Expedition of Academy of Sciences, USSR"に参加しました。これは、1946年から開始されたモンゴル・ロシアの古生物学調査70周年を記念して開催されたシンポジウムです。本学からは生物地球学科の石垣先生と私、生物地球科学専攻1年生の浅井瞳さん(實吉研)、生物地球学科4年生の逸見千裕(實吉研)さんが参加し、H., Asai, M., Saneyoshi, H., Nishido, S., Toyoda, Kh., Tsogtbaatar, B., Mainbayar『Stratigraphic assignment of eolian sediments in the central Gobi desert, Mongolia using an indicator of defect center in quartz composed of sand particles』と、S., Ishigaki, B., Mainbayar, Hk., Tsogtbaatar, T., Tanabe, M., Saneyoshi『Dinosaur Ichnology of Mongolia』の2件を発表しました。特に前者の研究は、生物地球学科の西戸教授や応用物理学科の豊田教授、そして生物地球学科の実吉が合同で実施しているゴビ砂漠の恐竜化石産地に関する地質学的研究です。本発表の一部は、若手研究(B)『石英粒子を用いた新たな化石産地同定法の開発』(代表;実吉玄貴)、岡山理科大学プロジェクト研究推進事業とも関連しています。シンポジウムにはAMNH(アメリカ自然史博物館)のMark Norell博士やアルバータ大学のPhil Currie博士(お二人とも高名な肉食恐竜の研究者です)なども参加し、ロシア側からはA. Y. Rozanov先生や、S. V. Rozanov先生も参加され、モンゴルIPGのR. Barsbold博士やTsogtbaatar博士など、モンゴルの恐竜化石研究に関わってきた様々な先生方のお話しを伺うことができました。
【写真上】発表中の浅井瞳さん(右)。特に地質関係の方々からの質問が多くありました。
【写真下】シンポジウムの集合写真


 シンポジウム後は、ゴビ砂漠南西部に位置するNemegt、Altan Ula、Naranbulagへの巡検に参加しました。これらのサイトは道路距離で、ウランバートルから1000㎞ほどあります(遠い・・)。現在は、Dalanzadgadまで舗装道路が完備されており、最初の650㎞ほどは舗装道路ですが、最後はオフロードをひた走り、全行程2日の移動となりました。

 巡検一日目はNemegtと呼ばれる化石産地です。ロシア隊だけでなく、ポーランド隊、日本隊、本年は北大を中心とした国際調査隊など、これまで多くの調査隊によって発掘調査が進められてきた地域です。実は私にとっては初めてのNemegt訪問であり、まさに聖地に足を踏み入れるような神聖な気持ちになりました。露頭は圧巻というべきもので、近い内に別の形でご報告したいと考えています。
【写真上】露頭を前に出発する気マンマンの私
【写真中】露頭を登る4年生の逸見さん(初めてのゴビで苦労が多かったですね;汗)
【写真下】分析用サンプルの採取も実施しました(左;浅井さん、右;私)


 2日目はAltan UlaとNaranbulagの化石産地です。Altan Ulaは、2006年に訪れて以来、10年ぶりでかなり興奮しました。10年前は、どうやって調査するべきかまったくわかりませんでしたが、年を重ねると怖いもので、『こうやったら調査できるかな、**日あれば調査できる、あそこで地層の記載をしよう』などど、自然に考えられるようになりました。ゴビ砂漠で沢山の経験をさせてもらえたからでしょうね。ちなみにAltan Ulaからはデイノケリウスが見つかっています。
【写真上】Altan Ulaで見つかった化石(タルボサウルス)と学生と私(盗掘後サイトのため心では泣いていますが・・・)
【写真中】アルバータ大学のPhil Currie博士と露頭でお話し
【写真下】露頭に夢中の40歳(誰かに似てると思ったら師匠の地層観察と同じスタイルでした;苦笑)


 巡検後は、Yagaan Khovilへ移動し、産出した化石の層準決定と産地全体の岩相を見てきました。思ったより素直な層序で、記載も終えることができましたし、砂岩のサンプリングもできました。今後大学での分析を進める予定です。記載層序は、モンゴル側研究者や北大の小林先生との共同研究で使用する予定です。
【写真】Yagaan Khovilでの一コマ(テントで夕食中)


 9月のゴビ砂漠は寒いという印象でしたが、最後の3日間を除いてそこまで寒くはない巡検となりました。ただし、最後の調査時はさすがに寒かった(-2℃ですから)。モンゴル調査のこれまでの歴史と、これからの未来の調査に心躍らす10日間でした。なお、本巡検とサンプリングに関わり、若手研究(B)『石英粒子を用いた新たな化石産地同定法の開発』(代表;実吉玄貴)から支援を受けました。この場を借りてお礼申し上げます。


2016年9月8日 モンゴルゴビ砂漠調査

 本年も8月9日から22日の日程で、モンゴルゴビ砂漠での恐竜化石発掘調査と地質調査を行いました。今回の調査は、岡山理科大学プロジェクト研究推進事業「恐竜研究拠点形成-新研究手法によって恐竜の生理・生態と環境変遷史研究の新たな地平を拓く-(代表・石垣忍教授)」の一環であり、岡山理科大学が大学全体として取り組む調査の開始ともなります。そのため、生物地球学部・理学部・自然科学研究所の各教員と学生が参加、2週間の調査をゴビ砂漠南東部のBayshin Tsavを中心に実施しました。この他、複数の化石産地を回り、多くの石膏ジャケットを作製し、化石採取をしています(Egg Nestと呼ばれる巣化石も発見されています)。採取された化石は、今後モンゴルにてクリーニング作業を実施し、大学での分析に備えます。以下、写真で調査を振り返ります。

【写真上】ウランバートルでの調査準備です。恐竜化石達が見守っています。今回は物資が多目でした。
【写真中】ウランバートルを出てしばらくすると、地平線へと続く一本道となります。
【写真下】普通の地面に見えますが、干上がった湖の中に続く道です。道の周りには乾裂痕と呼ばれる干上がり痕が見られます。

【写真上】とある化石産地の地表面です。獣脚類の歯や爪も見つかります。これらは今後大学で鉱物分析の対象となるでしょう。
【写真中】ハドロサウルス類の仙椎付近でしょうか?河川の堆積物に埋まっていました。
【写真下】モンゴル人研究者による発掘の様子です。さて、いいものがでてきたでしょうか?

【写真上】石膏によるジャケット製作の様子です。周りの地層ごと、石膏で固め、ラボでクリーニングをします。
【写真下】ギプテープと呼ばれる石膏包帯を使うこともあります。写真は小型化石(カメ類)のジャケットを製作しているところ。

【写真上】今回は卒論テーマとして『古流向を用いた河川環境の復元』を実施しています。
【写真中】研究室から参加した学生2名(院生1名・卒論生1名)が地層を綺麗に露出する練習中です。
【写真下】2人の学生の他、地質調査に同行したモンゴル人若手研究者2名を交えて記念撮影。
     今回は、この5人でメインの調査地であるBaysin Tsavの岩相層序を組み立てました。

 今回も化石発掘や地質調査、若手研究者の指導と、目まぐるしい調査となりました。一年ぶりのゴビ砂漠調査は、これまでの鬱憤を晴らすかのような調査となりました。特に今回調査した東ゴビの地層群については、新たな知見も多数見つかり、恐竜研究の基礎として極めて重要な発見につながりそうです。来年へつながる素晴らしい調査ができました。

 最後に、本調査には岡山理科大学およびモンゴル科学アカデミー古生物地質学研究所(IPG)の多大なる支援を頂戴しました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。


2016年6月27日 日本古生物学会2016年年会への参加

 6月24日から26日にかけて、福井県立大学および福井県立恐竜博物館にて開催された、日本古生物学会2016年年会に参加しました。本研究室からは、『モンゴル上部白亜系Djadokhta層のESR特性;浅井瞳・実吉玄貴他3名』(科学研究費補助金若手(B)『石英粒子を用いた化石標本の新たな産地同定法の開発』(代表;実吉玄貴)と関係しています)と『発掘体験キットの開発と博物館における展示;山口大貴・実吉玄貴・なぎビカリアミュージアム』の2件を発表しました。前者は、研究室院生の浅井君の卒論+修論研究であり、後者は昨年度卒論で開発した体験キットの作成方法紹介です。すでに卒論発表会も経験しているので、緊張しながらも浅井君はよく発表してくれました。手法が新しいため、興味を持つ先生方も多数いらっしゃいました。発掘キットは博物館で活躍される方々には、簡単にできる方法として、広く知ってもらうことができました。はやくペーパーにしなくては・・・。

研究発表をする浅井君(岡山理大修士課程)

 学会は福井県立博物館でも開催されたため、そちらにも赴きました。相変わらずの展示で、いつも圧倒されます。標本も増えていっているようで、さすがですね。博物館へは、北大博士課程の田中君と北海道沼田町化石館の田中先生とご一緒させて頂きました。

福井県立恐竜博物館で記念撮影
(左から、岡山理大修士課程浅井君・私・北大博士課程田中君・沼田町化石館田中先生)


 北大の田中君は、福井県博の第三次発掘バイトに参加されたとのこと。私も第二次に参加させて頂いたため、懐かしの地へ足を運びました。色々な場所が残っているいことに、懐かしさや当時の思い出話に盛り上がります。この頃に広がった人脈は今も存在しており、本当によい経験をさせてもらった、と心から感謝しています。昼食は当地名物のカツを頂きました。大学の後輩でもある鳥取県立博物館の田部君などにばったりと出会い、行動範囲の重なりと、人との繋がりを実感した次第です(汗。

懐かしの場所で記念撮影(北大田中さんと私)


2016年6月15日 ウランバートルで夏調査の準備作業

 6月10日から14日の日程で、古生態・古環境学研究室(實吉)による夏の調査準備を、モンゴル国・ウランバートル市にて実施しました。岡山理科大学とIPG(Institution of Paleontology and Geology)のゴビ砂漠調査は、昨年より本格的に開始され、本年度は2年目となります。本年度からは、学内での新たな試みにより、生物地球学科のみならず、学内の複数学科に所属されている教官が参加する予定です。昨年より参加人数も増える予定のため、どうしても調査準備を入念に行う必要があります。準備に手を抜くと、ゴビ砂漠で痛い目にあいます(苦笑)。

 調査準備は多岐に渡りますが、こちらで準備できる重要なものは、『発掘機材』と『キャンプ用品』です(この他、車両やガス、食糧などがありますが、これらはモンゴル側によって用意してもらいます)。前調査隊から引き継いだ数々の物品類ですが、メンテナンスが非常に重要で、常に状態を確認しながら、調査に備えます、

キャンプで使用する個人テント。1つ1つを設置して状態を確かめます。特にファスナーの状態と破れをチェックしています。

大型テントの確認。今回はフレームの一部に破損が見つかったため、修復しました。

GPSの動作確認。参加人数が増えると、用意する道具類も増えるため大変です。

 この他、すでに採取しモンゴル側に保管をお願いしていた試料類の発送準備も行いました。恐竜化石産地で採取した砂岩試料ですが、今後学内にて鉱物解析を実施する予定です。これらは科学研究費補助金若手(B)『石英粒子を用いた化石標本の新たな産地同定法の開発』(代表;実吉玄貴)でも研究対象となる砂岩試料です。また、本研究室の卒論生や修論生も携わっています。

タルボサウルスが見守る下での梱包作業です(IPGの展示スペースを拝借しました)。

 またこの展示スペースの横には、プレパレーションルームがあり、モンゴル国内から産出した恐竜化石のクリーニング作業が行われています。非常に膨大な量が産出するため、クリーニング作業も大変ですね。

相談をしながら、クリーニング作業中。

プレパレーションルームの様子です。作業内容により道具や場所がわかれています。


2016年3月28日 なぎビカリアミュージアムでのワークショップ

 現在開催されているなぎビカリアミュージアムの特別展へ参加し、講演会とワークショップを行いました。今回は【化石ラボへようこそ】と題し、海外での化石発掘の様子をお話しした後、みんなで恐竜化石の発掘体験キットを使った化石発掘に挑戦しました。当日はなんとか天候も晴れ、保護者の方を含め40名ほどが参加しました。クリーニングでは、みんなが必死に恐竜レプリカ化石を掘り出しました。今回の活動を含め、論文化を急ぎたいと思います。今回の特別展では、4月17日にも【化石クリーニング体験】を行う予定です。今度は、それぞれが発掘したビカリアを使って、実物化石のクリーニング体験の予定です。詳しくはなぎビカリアミュージアムまでお問い合わせください。

講演会の様子です。

体験キットのやり方を説明しています。
みんなやりたくてウズウズしていますね(笑。

30分から1時間で体験できます。みんな夢中になって掘っています。
開発した研究室卒論生のT.Y.君にも見せてあげたかった光景です。


2016年3月25日 アフリカの猿人化石論文発表

 ケニア国立博物館・京都大学が共同代表となり、島根大学等と地質の共同調査を行っていた、ケニア共和国から産出したアウストラロピテクス・アファレンシスに関する論文が公表され、ナイロビにてプレス発表が行われました。京都大学からもプレス発表されています。すでに国内でも報道されているようです。発表された論文は、以下の通りです。

Emma Mbua, Soichiro Kusaka, Yutaka Kunimatsu, Denis Geraads, Yoshihiro Sawada, Frank Brown, Tetsuya Sakai, Jean-Renaud Boisserie, Mototaka Saneyoshi,Christine Omuombo, Samuel Muteti, Takafumi Hirata, Akira Hayashida, Hideki Iwano, Tohru Danhara, Rene Bobe, Brian Jicha, Brian Jicha, Masato Nakatsukasa (2016) Kantis; A new Australopithecus site on shoulders of the Rift Valley, near Nairobi, Kenya, Journal of Human Evolution, 94, 28-44.

Elsevierの論文サイト;http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0047248416000208
京都大学のプレス発表;http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/160324_1.html

 今回発見されたアウストラロピテクスは、大地溝帯の外側かつナイロビ近郊の化石サイトで見つかりました(これは大変な驚きです)。この発見によりアウストラロピテクスは、エチオピアからケニアやタンザニアといった東アフリカの広範囲で、かつリフト外縁といった多様な環境に進出していたことが証明されました。しかし、化石産地が宅地に近く、開発から産地を保護することが喫緊の課題となっています。

 当研究室は島根大学地球資源環境学科の酒井哲弥准教授や沢田順弘名誉教授と共同で、現地での地層調査(層序・堆積環境の解明)や足跡化石調査(記載と解釈)を担当しました。収集された地質データは、化石研究において極めて重要な基礎資料となります。化石研究を行う上で、化石の産出する地層の調査は、年代測定を含め科学的研究の片輪であるためです(もう片輪が生物学的・解剖学的記載です)。現在、化石研究はチームで行われることがほとんどです。ですから、将来化石の研究を志す皆さんも、チームで動ける人材になってもらいたいと思います。

 英語で書かれていますが、ぜひ学部生にも購読を挑戦してもらいたい論文です(層序や古環境・年代・同位体・化石記載の総合的な論文になっています)。当研究室では、モンゴルの恐竜化石と伴に、ケニアのヒト祖先化石に関わる研究も、京都大学や島根大学などと共同で行っています。


2016年3月24日 名古屋大学博物館への特別展協力

 4月19日(火)から8月27日(土)の期間、名古屋大学博物館でモンゴル関係の特別展が開催されます。これに合わせて、名古屋大学より標本に関する協力依頼があったため、当コースが保管しているモンゴル・ゴビ砂漠産のプロトケラトプス全身骨格を貸し出しました。頭蓋骨から尾骨まで、ほぼ全身が保存されている大変状態の良い標本のレプリカです。名古屋大博物館の長谷川先生や藤原先生は、モンゴル地質や恐竜に関して精力的な研究をされております。このような国内における恐竜研究のつながりを大切にしていければ、と思っています。

写真中段のプロトケラトプスを貸し出しています。


2016年3月22日 なぎビカリアミュージアム春のイベント特別協力

 3月19日(土)から5月5日(木)にかけて、なぎビカリアミュージアム(奈義町)にて『なぎビカリア春のイベント なぎ化石研究所2016』が開催されます。生物地球学部は特別協力として参加し、モンゴル恐竜化石関係の標本貸出や設置、展示構想など、本展示会に深く関わっています。当研究室も、毎年参加していますが、本年は卒業研究を行ったT.Y.君の『発掘体験キット』も展示に加えました。これは恐竜キャストを、硬さ調整した砂地に埋め、化石クリーニングを体験してもらおう、とT.Y.君発案、ビカリアミュージアムとの共同開発の展示物です。ゴビ砂漠の上部白亜系風成層に似せた砂質マトリクス製作は大変でしたが、最後は研究室学生の協力もあって、特別展へ間に合いました。一部は、3月27日に開催されるワークショップ『化石ラボへようこそ』にて使用予定です。T.Y.君は在学中に博物館学芸員資格も取得し、卒業研究も博物館活動を中心に行いました。研究室が行う様々なワークショップや講演会にも数多く参加し、教官と一緒にいた時間が一番長かった学生だと思います。大変な苦労もありましたが、子ども達が夢中で発掘している様子を見て、感無量の照笑いでした。卒業式ギリギリまで頑張ってくれたT.Y君に感謝です。一年間お疲れ様でした。今後、化石プレパレーションによる博物館活動貢献の成果として論文化を目指します。

展示会のチラシです。3月から4月にかけてワークショップ・講演会が予定されています。

展示会の標本設置中、大学広報の撮影がありました。
T.Y.君がアロサウルスのSkullを持って記念撮影。

子ども達にキットの使い方を説明するT.Y.君です。

でも、やっぱり夢中になってこの大騒ぎ(笑。


2016年3月13日 モンゴル・ウランバートル市のIPG訪問

 3月7日から12日にかけて、研究室が参加する私立大学戦略的研究基盤形成事業『鉱物の物理化学特性から読み取る地球、惑星の環境変遷史;モンゴルゴビ砂漠上部白亜系風成層の後背地解析』の一環で、モンゴルのウランバートル市にあるIPG(Institution of Paleontology and Geology)を訪れました。

 本プロジェクトは本年度が最終年度であり、これまで行ってきた様々な研究成果をIPG所長のツォクトバートル博士へ報告し、国際的な研究成果の共有を行いました。今後、モンゴル国における地質学的研究に役立ててもらえるよう、データの管理方法や比較方法、関連分野への発展的な利用方法などを話し合い、これからもIPGと岡山理科大学でデータ共有されることとなりました。一部は論文化作業を開始する予定です。さらに、今後の古生物学的研究への貢献なども期待されます。なお最終日の午後、IPGがウランバートル市にて開催している特別展にも招待してもらえました。これまで林原との共同調査で得た様々な恐竜化石を展示しており、大学が管理するモンゴルの恐竜化石レプリカとの比較も進むことでしょう。現在、研究室が実施しているプロトケラトプスの研究では、まだまだやることがありそうです。

 ウランバートルは週の初め厳しい寒さでしたが、滞在中に最高気温が10度ほど上がってくれたため(マイナス気温ですが)、昼間であれば出歩ける程度になっていました。それでもやはり寒いウランバートルでした。帰国して外気の優しさにほっとしています(笑)。

【写真上】訪れたIPGの古生物学ラボ
【写真中】ウランバートルは冬景色ですが、春はもうすぐそこです
【写真下】現在進行中の獣脚類研究に関連し、展示会の恐竜化石を一瞬だけまじかで見させてもらいました


 


2016年2月13日 生物地球学科卒業論文発表会

 今年も卒論発表会の季節となり、本研究室からは6人の卒論生が発表を行いました(カッコ内はイニシャル)。

(H. A.)モンゴル上部白亜系Djadokhta層のESR特性
(Y. O.)岡山県北部に分布する中新統勝田層群の古環境解析とVicarya sp.における形態変化
(R. K.)骨組織学的比較を用いたMongolochelysの古生態復元
(S. M.)成長に伴う角竜類頭部の形態変化
(T. M.)旭川現生河川洲の堆積過程とその植生分布の関係
(T. Y.)博物館における体験型展示の開発

 古生物学から地質学、中生代から現在、はては博物館活動まで、見事にバラバラなタイトルですね(笑)。このような研究室だと、隣にいる学生と自分の研究について直接相談できない反面、研究に対して思った以上に視野が広くなる利点もあります。私も学生時代によく言われましたが、『隣に座っている学生の研究を理解しようとすると、自分まで勉強になる』という環境が自然に育まれたように思います。これは、卒業後社会でも役に立つ、とても大切なスキルです。卒論生の皆さん、お疲れ様でした。あとは卒論提出です、最後まで頑張りましょう!

【写真上】説明中のY. O.君
【写真下】学生に囲まれ説明するH. A.君


2016年2月1日 日本古生物学会第165回例会にて高校生ポスター発表

 2016年1月29日-31日に京都大学で開催された日本古生物学会第165回例会にて、岡山理科大学付属高等学校3年生の杉本征弥君が、『獣脚類趾骨化石からみた成長に伴う骨組織の変化』と題した発表を行いました。杉本君は本年度SSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業の一環として、骨化石剥片の製作・観察・関係する英語論文の読解を行ってきました。長く高いハードルだったと思いますが、心を折らず頑張った結果です。この点は高校生も大学生も変わりませんね。英語は読めるようになるまで訓練あるのみです!
 今回も、学会には脊椎動物化石の研究を行う多くの先生方・学生さんが参加されていました。北海道大学博物館の小林先生をはじめ、多くの化石研究者に発表を聞いてもらい、重要な御指摘や発展的研究へ向けたご指導を沢山いただきました。初めての学会発表で緊張していたようですが、次第に雰囲気にも慣れ、最後は他校の高校生とも健闘を称え合っていましたね。学会からも奨励賞を頂き、今後も研究を続ける、と心に決めた模様です。よい経験をさせて頂きましたね、杉本君お疲れ様でした。関係者の皆様へ厚くお礼申し上げます。

北海道大学博物館の小林先生に説明する杉本君。ちょっと緊張気味かな?

中国地質大学博士課程1年生の黒須さんからご指導を受ける杉本君。黒須さんは獣脚類の研究をされています。

日本古生物学会から研究奨励賞を授与されました(受賞式の様子、写真は前田会長と杉本君)。


2016年1月14日 新年の御挨拶

 2016年がはじまりました。皆様にとって幸せな1年になりますように。さて、大学では秋学期の担当授業が終了し、定期試験と入学試験が本格的にはじまります。私が主担当する授業『古生物学概論I(1年生)』と『古環境学(2年生)』も無事に15回を終了し、月末から来月頭にかけて定期試験となります。皆さん、単位を取得できるよう頑張ってください。
 本年は、恐竜・古生物学コースの3年目となり、3年生の古生物学実習や堆積学の専門授業がはじまったり、化石研究の新しい枠組みにトライしたりと、これまでの2年間より拍車のかかった活動的な1年になりそうです。日本でも珍しい化石を学べる大学・学科として、若手の皆さんが自由に研究できる土台作りの年にしたいと考えています。近々には、月末の日本古生物学会例会にて、付属高校の3年生・杉本君(本年度を通してSSHで頑張ってきました)の発表『獣脚類趾骨化石からみた成長に伴う骨組織の変化』があります。また、これまでの卒業研究の一部や昨年夏の調査を、本学自然科学研究所紀要に提出します。さらに、本年度卒論の発表会(2月)と一部の論文化(春頃)、なぎビカリアミュージアム特別展協力(3月)など、これから明らかになっていきますが、研究室学生も一緒に頑張っています。海外調査では、本年夏のモンゴル調査へ向け、また新たな1年もはじまります。ケニアの調査も引き続き頑張ります。

皆様、本年もよろしくお願い致します。

2016年1月 岡山理科大学生物地球学科・實吉玄貴