最近の出来事2015

2015年2月4日 日本古生物学会例会にて研究発表
 1月30日から2月1日に、豊橋市立自然史博物館にて開催された、第164回日本古生物学会例会にて、モンゴルゴビ砂漠の上部白亜系に関する研究発表を行いました。なお、本研究には、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成24年~平成27年)の協力を得ました。
増田理沙・実吉玄貴・西戸裕嗣・Khisigjav Tsogtbaatar・Tsogtbaatar Chinzorig・Buurei Mainbayar
ゴビ砂漠恐竜化石産地に分布する上部白亜系を構成する石英粒子のカソードルミネッセンス特性


2015年2月14日 生物地球システム学科卒業研究発表会(實吉研)
 2月14日に生物地球システム学科の卒業研究発表会がありました。實吉研からは3名の卒論生が一年間の研究成果を発表しました。当日は緊張していたようですが、発表がはじまれば皆堂々と発表をしていましたね。お疲れ様でした。卒論の提出も忘れずに頑張ってください。

【写真上】奈義町周辺に分布する中部中新統の地質学的特徴、【写真中】ゴビ砂漠東部より産出した獣脚類指骨化石の記載と同定、【写真下】旭川現世河川洲における堆積構造と堆積物分布

 


2015年2月26日 理大生による理大プレス記事
 岡山理科大学の大学広報が企画する、「理大生による理大プレス」に取材記事が掲載されました。下のリンクから記事をご覧ください。



2015年3月13日 モンゴル訪問
 研究室が参加する私立大学戦略的研究基盤形成事業『鉱物の物理化学特性から読み取る地球、惑星の環境変遷史;モンゴルゴビ砂漠上部白亜系風成層の後背地解析』の一環で、モンゴルウランバートルにあるMPC(Mongol Paleontological Center; 近くInstitution of Paleontology and Geologyに改名予定)を訪れました。今回は、MPCが保管する標本の調査、および石英粒子サンプルの採取が目的でした。また、MPC所長のTsogtbaatar博士と、来年度以降の恐竜研究および脊椎動物化石研究について、突っ込んだ議論を行いました。モンゴルはまだ寒く、昼間でも-1℃程度です。訪問中は天気に恵まれ、それほど寒く感じない日々でした。

【写真上】Protoceratopsの基質部より砂の採取、【写真下】MPCがウランバートルで展示する標本設置の様子。

 


2015年3月20日 奈義ビカリアミュージアムへの展示協力
岡山県北部の奈義町にある奈義ビカリアミュージアムにおいて、3月21日(土)から5月6日(水)まで特別展『なぎ春のイベント2015 恐竜の絶滅とその後』が開催されます。生物地球学科からは、隕石標本と恐竜化石標本を提供し、展示制作へも一部加わっています。また期間中、学科教官である西戸教授と實吉が講演会・ワークショップを予定しています。詳しくは、奈義ビカリアミュージアムへお問い合わせください。

【写真上】設置した恐竜標本、【写真下】隕石展示の一部


2015年3月23日 化石標本の整理作業
恐竜・古生物コースにはたくさんの化石標本や骨格標本があります。今後、授業や実習、卒業研究などで活躍する予定ですが、そのためにも常に整理整頓が必要です。古生態・古環境研究室でも、化石研究を実施しています。研究室所属の学生には、常日頃から標本の管理法・運搬時梱包・標本設置等を手伝ってもらっています。最近、70を超える大小の標本群を開封しながら、状態確認と写真撮影を行いました。博物館では常に実施される作業ですが、実習などでも手にすることのない標本も含め、まさに研究室で行われる実地訓練となっています。これは、自然科学系博物館学芸員にも必要なスキルの1つです。

【写真上】アロサウルス骨格標本の脚部の開封、【写真下】小分けされた標本を標本箱内にて整理中


2015年6月16日 モンゴルでの調査準備とサンプリング
研究室が実施している、科学研究費補助金若手(B)『石英粒子を用いた化石標本の新たな産地同定法の開発』(代表;実吉玄貴)では、本夏にゴビ砂漠調査を予定しています。今回、これらの調査準備や、モンゴル側でお世話になるInstitution of Paleontology and GeologyのTsogtbaatar博士との調査打ち合わせ、砂サンプルの化石標本からの採集などを実施しました。ゴビ砂漠の調査では、テント・発電機・発掘用具・地質調査道具など、様々な用品が必要となります。これらの在庫有無や状態をチェックすることで、本番での調査を円滑に実施できます。

【写真上】テント数をチェックしています、【写真中】テントを広げてチェックしています、【写真下】砂を採取した化石標本(卵化石)

 


2015年9月22日 2015年夏のモンゴル・ゴビ砂漠調査

 2015年夏、モンゴル国のゴビ砂漠中央部に分布する上部白亜系Djadokhta層の調査を行いました。この調査は、岡山理科大学とモンゴル科学アカデミーInstitution of Paleontology and Geologyの共同調査です。調査の目的は、化石産地(Udyn Sayr, Dzamin Khondなど)に分布する砂丘堆積物の調査と砂質堆積物の採取、化石探査です。なお調査は科学研究費補助金若手(B)『石英粒子を用いた化石標本の新たな産地同定法の開発』(代表;実吉玄貴)の一環として実施しています。

 調査に出る前に、モンゴル国首都のウランバートル市で調査準備を実施します。本年は6月に事前準備を進めていたため、出発3日前に現地入り後の出発となりました。【写真;ウランバートルでの調査準備。ゴビ砂漠産のタルボサウルスが見守っています】

 

 主な調査地であるUdyn Sayrは、モンゴル国のゴビ砂漠中央部よりやや西側に位置する古くから知られる恐竜化石産地です。ここには風成層が広く分布しています。より東に位置する他のDjadokhta層が分布する化石産地にみられる風成層との関係性を調査することが目的です。調査の結果、Udyn Sayrでは、風成層を形作る砂丘の形が堆積と伴に変化していくこと、河川堆積物が風成層の同時異相として存在すること、地層はほぼ水平に堆積しこれまで考えられていた地層分布と異なること、などが分かってきました。砂サンプルを採取し、今後大学にて石英粒子の分析を進める予定です。

【写真上;Udyn Sayrにみられる風成堆積物、写真下;サンプリングの様子】

 またUdyn SayrではProtoceratopsの幼体化石が発見・採取されています。Udyn Sayr産のProtoceratopsは、より東側から発見される同種と良く似ていますが、フリルの形状などが異なるものが多く、種内変化等が議論されています(Handa et al., 2012)。これらの議論を深めるためにも新たな標本を追加できることは学術的に重要です。【写真;発掘の様子。ジャケットにするため、周辺を掘り込みます】

 この他、KhongilやYagaan Khovilなどの化石産地を訪れ、化石探査を実施しました。これらの産地でもに砂サンプル採取を行いました。今後の分析結果が楽しみです。また調査中、何度か砂嵐に遭遇しました。ゴビ砂漠ではよく起こる現象で、毎回、自然の力強さを思い知らされます。砂嵐が来たら、大型テントは一時的に畳み、過ぎ去るのを待つしかありません。砂嵐といっても強い雨を伴うことがほとんどです。だからみんなグショ濡れ(笑)。しかし、過ぎ去ったあとは、素晴らしい景色を見せてくれます。【写真上;砂嵐でテントを一時的に畳む、写真下;砂嵐が過ぎ去った後の夕日】

 私にとっても久しぶりのゴビ砂漠での調査でしたが、調査中に『ここで調査できることの幸せ』をかみしめる日々でした。今後もゴビ砂漠の調査を継続しながら、地質・恐竜化石の両面の調査を進めていきたいと強く願った本年夏の調査でした。


2015年10月21日 古脊椎動物学会(SVP)への参加と発表

2015年10月14日から17日にかけて、米国ダラス市にて開催されたSociety of Vertebrate Paleontology (SVP)75th Annual Meeting(古脊椎動物学会第75回年会)に参加してきました。SVPは北米を中心とする古脊椎動物を扱う世界でも有数の学会です。恐竜だけでなく、哺乳類や両生類、魚類にまで、幅広い化石研究者が集まる学会でもあります。

今回、生物地球システム専攻2年生の増田理沙さんが『Stratigraphic assignment of dinosaur-bearing eolian sediments in the Gobi desert, Mongolia and its application for a program of dinosaur-fossil protection from illegal activities』と題したポスター発表を行いました。この研究は、地球惑星科学研究室(西戸教授)と古生態・古環境学研究室(実吉)が合同で実施しているゴビ砂漠の恐竜化石産地に関する地質学的研究です。増田さんは、卒業研究から、本研究に携わっており、本研究室が実施する、科学研究費補助金(若手(B)『石英粒子を用いた化石標本の新たな産地同定法の開発』)や、私学戦略的基盤形成事業(地球惑星プロジェクト)における本研究室の中心的研究でもあります。この研究に進捗によって、モンゴルの化石産地の地質背景がより理解される可能性が高く、モンゴル恐竜化石に関わる北米を中心とする多くの研究者と議論を交わすことができました。増田さんお疲れさまでした。
【写真上】増田さんのポスター発表
【写真下】ポスター会場の様子

 

またSVPでは、古生物学に関する様々なオークションが開催されます。今回は標本の他、書籍やTシャツ、人形、絵画など、なかなか日本では見ないものが並べられており、会場も盛り上がっていました。ちなみに、私はTシャツやぬいぐるみを落札できました。
【写真上】サイレントオークションの様子。自ら落札額を記入していきます。
【写真下】出品された巨大ワニのレプリカ。博物館で良くみるタイプですね。

 

さらにWelcome Partyはダラス市内にあるPerot Museum of Nature and Science内で実施され、様々な標本を眺めながらの立食パーティーです。SVPでは時々このような博物館内でのパーティーを実施することがあるそうで、非常に面白いと思います(片づけが大変そうですが)。また最終日のAwards Banquetでは本年の受賞者を皆で称え、その後のAfter Hours Partyでは夜の1時過ぎまでダンス大会です。皆さん、発表の重圧から解放され、ここぞとばかりに弾けて、楽しいパーティーでした。国内学会とは一味異なる体験ができ、他大学や北米の研究者や学生さんと様々な話をしながら、現在の古生物学研究の動向を知るよい機会でした。
【写真上】Welcome Partyの様子
【写真下】Awards Banquetでの1コマ。一緒に写るのは北大・小林研の大学院生と増田さん

 


2015年11月6日 野外調査法実習I(堆積)の実施

 生物地球学科では、1年次に野外調査法実習と呼ばれるフィールドワーク実習を行います。本研究室では、『旭川現生河川洲の形成過程』を例に、化石が含まれる堆積層の形成メカニズムを学ぶ実習を企画しています。今回も、1年生28人を対象に実習を実施しました。

 陸上の大型化石を研究する場合、化石を含む地層を研究することで、化石動物達の暮らした環境や、化石動物を含む生態系、年代などを知ることができます。化石研究の前段階として、地層ができる現場を直接観察し、なぜ地層ができるのか、地層の特徴から何がわかるのか、を知ってもらうことが目的です。

 今年の実習は天気に恵まれ、河川水位も低かったことから、河川洲を直接観察することができました。皆さん、レポートの提出頑張って下さい。

【写真上】微地形の観察【写真中】河川洲全体の観察
【写真下】なぜ表層の色が違うのだろう?なぜ植生がこのように分布するのだろう?を観察


2015年12月22日 3研究室合同セミナーを開催

 年の瀬ですが、基礎理学科の藤木先生(花粉学)、生物地球学科の矢野先生(植物系統分類学)と合同セミナーを開催しました。当日は教官4名を含め20名ほどが参加。当研究室からは、以下の6件がエントリーし、発表を行いました。
・モンゴル上部白亜系Djadokhta層のESR特性
・骨組織学的比較を用いたMongolochelysの古生態復元
・旭川現生河川洲の堆積過程と植生分布の関係
・成長に伴う角竜類頭部の形態変化
・岡山県北部に分布する中新統勝田層群の古環境解析とVicarya sp.における形態変化
・博物館における参加型展示の開発
普段のゼミとは全く異なる雰囲気の中、生物系の先生方から貴重なご意見を沢山もらえました。卒論の本番発表会まであと2か月を切っています。最後の追い込みに期待していますよ!!
【写真上】発表を聞く観衆
【写真下】基礎理学科の学生による発表