1.        一次レスキュー(陸前高田市立博物館)

 

東北地方第1号の公立博物館である陸前高田市 立博物館。

 

被災直後には、玄関にワゴン車が流れ込み、館 内、周囲は大量のがれきに埋め尽くされ、足を踏み入れることさえ困難で、資料が残っているのかも不明でした。最初の写真はその時の様子です。館内には住宅 が1〜2軒、自動車が2台、プロパンガスのボンベも流れ込み、危険な状態でした。


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エントランス付近
1階考古A

1階玄関・ロビー

資料を運び出すためのルート確保のため「がれき」の撤去が進行しつつあった状況で す。

 

  

1階考古資料展示

がれきを撤去すると床面から50p以上も土砂が堆積していて、この中から1点1点資 料を救出しました。

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1階地質

1階収蔵庫

津波を受け、土砂と海水が金属製の棚ごと標本をなぎ倒しました。ここには多くの貴重 な自然史資料が収蔵されていました。


1階地質資料展示

展示ケースやパネルなどは原形をとどめない状態にまで破壊され、がれきと共に展示室 の天井にまで届くほど堆積していました。

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2階民俗資料展示室

民俗資料の展示も壊滅的でした。直径1mを超す鉄製のイワシ釜は底に亀裂がみられ、 別の場所に展示してあった唐箕などの農具が散乱しています。

このように、最も被害が大きかったのが展示室です。展示室にあった資料は1階、2階とも大型の資料を除いて多くが流失してしまいました。


研修室での資料回収作業

この部屋には博物館の命ともいえる資料台帳がありましたが、ほとんどが流失してし まったため、資料の確認作業はとても困難を極めています。また、展示室に展示中だった資料の一部がこの部屋から発見されています。

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2階収蔵庫の被災状況

2階収蔵庫は主に民俗資料を収蔵していました。この中には国指定登録有形民俗文化財 の「陸前高田の漁撈用具」などがありました。

 写真のように扉は完全になくなり、内部には汚れた海水が天井にまで達するほど浸水 しました。しかし、この部屋には窓がなかったためほぼすべての資料が流失を免れました。


資料発見!

土砂の中に刺さっている茶色の物体。これは、展示室に展示してあって、研修室の床面 近くから発見された国指定史跡中沢浜貝塚から出土した縄文時代の装身具(ツキノワグマ指骨製)です。発見された資料の多くは床面近くから発見されていま す。

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自衛隊第9師団第9偵察隊による応援

4月下旬よりがれき撤去などの応援をいただきました。それまでは、道路事情が悪いた め往復2時間かけて、軽トラック1台で資料の移送をしていましたが、自衛隊の応援をいただいてから一気に資料の回収作業がスピードアップしました。我々で は動かすことすら無理だった大型の資料なども次々と運んでいただきました。なおかつ、細心の注意を払いながら土砂の中から資料の回収もしていただきまし た。


自衛隊に協力を頂いた資料 移送作業
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かっこ船の移送作業

館内で浮いたため、破損も比較的少なかった漁撈用の伝統的木造船です。館内の被災状 況の把握作業の進行とともに、慎重に扱って頂き搬出しました。また、背景に写っているように、天井には沢山の瓦礫や資料が刺さったり、引っかかったり、 乗っかったりしていました。


高田歌舞伎衣装資料

衣装ケースの中には黒く濁った海水が入っており、硫化水素系の悪臭を放っていまし た。

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回収され た植物標本

陸 前高田に生まれ、博物学に多大な功績を残された鳥羽源蔵先生のコレクションを含む植物標本は約14000点 収蔵されており、その標本が瓦礫の中から発見されました。


回収された昆虫標本

最も被害の大きかったのが昆虫標本です。特にチョウ・ガ類の標本の被害は甚大でし た。

貴重な岩手県初記録のチョウなども・・・。

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土砂からの回収作業

館内から搬出した土砂を「ふるい」を用いてもう一度精査しました。ここからもたくさ んの資料が回収されました。


 
 


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