教育と研究 能美研究室

 2022年卒研サンプリング 倉橋島

能美研究室の研究概要

 岡山理科大学がある岡山市や瀬戸内海沿岸地域には、白亜紀後期の花崗岩類が広く分布しています。花崗岩などの珪長質マグマは、プレート収束境界の深部で発生した塩基性のマグマが、マントルと地殻との境界付近、もしくは地殻内部で酸性化することによってできたと考えられています。バソリスを形成するほどの大量のマグマがどのようにして形成され、地殻内の大空間を占めることができるようになったのか、地下深部で固結したマグマは、その後どのような過程を経て地上に達したのか、地表面に出てきた花崗岩体はどのように侵食され、現在の地形を形成しているかなど、花崗岩に絡む様々な問題を考えていくと、結局は、日本列島はどのように形成されたのかの答えにつながっていると考えらています。 能美研では花崗岩をはじめとして、これに関係する様々な地質を対象として、卒業研究や大学院の研究を行なっています。

 フィールドワーク
 岩石の研究は、ある地域にどのような岩石が見られるのかが重要です。現地調査では岩相確認が第1歩であり、まずは肉眼観察(+ルーペ)で記載します。また、周囲の状況も確認し、岩石の組織の方向性や、節理・断層・貫入岩の有無、それらの方向などを記載します。目的によっては、風化の度合いを記載することもあります。
 室内研究
 野外から岩石を持ち帰えり、薄片を作成して、偏光顕微鏡で鉱物の種類や岩石の構造を観察します。また、岩石をパウダ-にして、蛍光X線分析で全岩化学組成を調べ、元素の組成を元に、岩石の詳しい分類やマグマの起源を推定します。さらに、特定の鉱物についてEPMAで元素の含有量を調べたり、ICP-MSで年代測定をすることもあります。
 ジルコン結晶形記載
 ジルコンは花崗岩の代表的な副成分鉱物です。年代研究用の資料として非常に重要な鉱物ですが、その結晶形態は実に多様です。その形態はマグマの性質について、何らかの情報を持っているに違いない、という作業仮説のもと、当研究室では、いろいろな岩体のジルコン結晶形のフィールドデータを集めています。
 地質学の教材研究
 地質学は少なからず世の中の役に立っている学問のはずですが、高校理科では扱わないところも多く、一部の人の学問になっている可能性があります。地質学の面白さを世の中にアピールするため、ジオ鉄や地質図を利用した教材・コンテンツ開発も行っています。そのために、GIS等の地図ツールを使ったり、そのためのツールを開発することもあります。

花崗岩ってどんな石? M. Kanchi(2021年度卒研制作:YouTube)
 文化地質学
 岩石は石材として古来より様々な用途に利用されています。どのような石がどのように用いられているか、それが地域とどのようにかかわっているかなどは、これまであまり注目されていなかったように思われます。文化地質学は、このような石や地球科学と人類の文化を繋ぐ試みです。
登山地質図
 登山では地形図を見ることが推奨されますが、そこに地質の情報を加えることで、より具体的に危険を察知させることや、その山の成り立ちを感じさせることができ、登山の魅力を高めることができると期待しています。卒業研究などで岡山県内の山を対象として登山地質図のプロトタイプを作成しています。

龍ノ口山の登山地質図 H. Fujimoto(2023年度卒研制作)

 

〇論文・●著書・□報告書など

〇土屋・照屋・青木翔・菅原・能美・青木-(2022) 関東山地北縁の河合山石英閃緑岩体:ジルコンU-Pb年代測定.Naturalistae,26,47-51.
●地質学と考古学(2022) 講座 考古学と関連科学,第4章,雄山閣,137-150.

〇石垣・高津・真加部・田部・上杉・西村・川畠・小平・山本・能美(2020) 足跡化石記録手法の発展と3-D技術.化石研究会誌,52,2,54-63.
□津山市文化財保存活用地域計画報告書(2020) 自然について&関連文化財群2/3,第1章第1項&第6章,津山市教育委員会.

〇坂本・根本・升本・能美(2019) 日本情報地質学会の教育活動と情報地質学教育の展望.情報地質,30,147-159.
●三段峡「地形・地質」(2019) 三段峡 樹木・景観ガイドブック,広島県安芸太田町.
●岩石・鉱物と博物館(2019) 新博物館園論,第1部4,同成社.

学会発表など

〇榎丸・土屋・能美(2021) 岡山県東南部のⅠ型・Ⅱ型花崗岩の貫入関係について-宝伝海岸露頭について-. 日本地質学会第128年学術大会.
〇能美・田邉・野瀬・定金・水野・田中・大嶋・清水(2021) 改訂版岡山県地質図の発行と今後の改定作業について. 日本地質学会第128年学術大会.
〇毛利・内藤・能美(2019) 兵庫県姫路市南東部に分布する後期白亜紀火成岩類の地質学的・岩石学的検討. 日本火山学会2019年度秋季大会.
〇内藤・能美(2019) 四万十帯古第三系砂岩に含まれるジルコンの結晶形態. 日本地質学会第126年学術大会.
〇能美(2019) 津山城の石垣の石:津山石. 日本地質学会第126年学術大会.

--> より詳しい情報は、岡山理科大学教員データベース<能美洋介>から

 

担当講義 2023年度

学部フルコマ担当:地球科学概論1(1年・秋)/エコ・ツーリズム技法(1年・通年)/地質学(2年・春)/土質・岩盤力学(3年・秋2)/卒業研究1(4年・春)/卒業研究2(4年・秋)

学部オムニバス担当:生物地球概論2(1年・春2)/野外調査法実習1(1年・通年)/地球化学(2年・春)/野外調査法実習2(2年・通年)/天文・地学実習(2年・春秋)/地学実習(3年・通年)/野外博物館実習D(3年・通年)

基盤オムニバス担当:人間を読みとくA(人生をマネジメントしよう)(春)/文化を読みとくB(富士山の魅力)(春)/文化を読みとくB(考古学)(秋)/自然を読みとく(物理で読みとく宇宙と地球)(秋)

過年度対象科目:地質図学(2年・秋)

大学院担当科目:地球表層学特論(オムニバス・秋)/自然科学特別講義(地球科学)(オムニバス・集中)

ーー> より詳しい情報はmylogから:<mylogログイン>→<授業関連:シラバス照会>

 地質学
 地質学における原理・法則、各種岩石や地層の形成過程、断層や褶曲などの地質構造について講義します。講義の後半には、受講生の出身地の地形地質の名所を照会してもらう発表会があります。
 地学実習
 3年生の地球・気象学コース対象の実習です。春1学期が担当で、巡検2コース+岩石薄片の観察を行ないます。巡検は室戸岬コースと山陰海岸コースがあり、それぞれ、2泊3日の合宿で実施します。

薄片観察・薄片の作り方(能美研版)
 文化を読みとくB(富士山の魅力)
 日本一の高さを誇る富士山は、活火山として噴火を繰り返しつつも、末広がりの独立峰としての美しさを持って、古くより人々の畏怖と敬愛の対象でした。この富士山の魅力の源泉はどこにあるのか、現地を訪ねて解き明かします。
 野外調査法実習2
 2年生の実習科目です。11月~1月期の担当で、蒜山高原で蒜山盆地の成りたちや旭川の変遷をたどる巡検を行ないます。蒜山盆地を見下ろしたり、大山や弓浜半島も見渡せる三平山からの眺めは一見の価値あり!
  能美研究室・ゼミ室 岡山理科大学D4号館3F
Noumi Labo. Dep./Facl. Biosphere-Geosphere Science, Okayama Univ. of Sci.  2023
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