3. 救出した資料の洗浄・保存処理・復元 |
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4月から閉校になった小学校が博物館になりました! | |||
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次々と博物館資料が運び込まれました。 |
海と貝のミュージアムで探し出し、箱に詰めた貝類
標本で理科室はいっぱいになりました。津波の中で貝殻は比較的丈夫で、それだけ標本が残ったということです。ただし、外にあった銅像等は流れ出しています
から、津波のエネルギーが強かったことは間違いありません。なお、鳥羽源藏先生の銅像は市内にお住まいの方からのtwitter経由の御連絡で内陸に約250m流された状態で発見され、この収蔵施設へ移送することができました。ありがとうございまし
た! |
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教室は砂と泥にまみ
れた民具で埋め尽くされました。民具だけですべての教室が埋まってしまいました。
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玄関先は海水に濡れた古い教科書などで埋め尽くされました。とことどころにキッチンペーパーを挟んで、扇風機で風をあてて乾燥させま す。その後、丁寧に泥や砂を払い落します。これで、本格的な処理を行うための準備が完了します。 |
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仮収蔵施設の2階の廊下は、博物館に寄贈されていた古いマンガ本
が整然と並びました。こちらも本格的な処理を行うための準備で扇風機の風をあてて乾燥させます。梅雨の時期は「カビ」が発生してくるため、このマンガ自体
が周囲の環境を汚す「汚染源」になり、毎日がカビとの戦いでした。
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扇風機で風をあて、乾燥させた紙の資料は、丁寧に刷毛を使って泥や砂を落とし、
アルコールを噴霧します。これから、これらの資料は塩分を除去する「脱塩作業」を行い、本格的な処理作業に入ります。 |
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国指定史跡中沢浜貝塚をはじめとする市内の貝塚から出土した骨角製漁具などは考古学上重
要な資料です。これらも泥や砂にまみれました。水洗いしただけでは微妙な「べとつき」が残るため、奈良文化財研究所に送り、保存科学の専門家に保存処理を
お願いしました。
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海水を吸った民具のカゴです。仮設のプールをありあわせの材料で作り、その中で脱
塩しました。 藁製品は、長い間水に浸けるのは禁物です。乾燥するまでにかなりの時間を要しまし
た。 |
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陸前高田に伝えられてきたさまざまな漁具も脱塩が必要です。特に鉄製の釣針などは
「錆」が進んでしまうと破損してしまいますので、これがうまく行くか大問題です。 民俗資料は、その用途や機能に応じて木、金属、植物、皮、骨などさまざまな素材を
駆使して製作されたため、その保存処理方法もさまざまな技術が必要となります。そのため、処理の経過を見ながら、慎重に保存処理をする必要があります。 |
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全国の博物館・
大学・学会などからの応援
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陸前高田市立博物館、海と貝のミュージアムの資料価値を全国のみなさんが再評価して下さり、「資料は陸前高田の宝であり、日本の宝でもある」という理念の ものと、多くの方々が資料を保存するために努力を続けていただいています。 |
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漁労具のレスキュー作業 |
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漁網は梅雨の晴れ間を見て広げて乾燥作業をしました。校庭がすべて漁網で埋め尽くされました。 | |||
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貝類標本のレスキュー作業 |
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貝の標本は消毒するための薬液に浸けて、水洗いし、最後にアルコールに入れます。その後、学名で記録をする「種同定」を行います。 これが大変! | |||
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植物標本のレスキュー作業
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岩手県立博物館に移送された鳥羽源蔵先生の植物標本です。約14000点あった植物標本は海水やヘドロに浸かってしまったものも多い のですが、1枚1枚ビニール袋に入れておいたことで、難を免れた標本もあります。ビニール袋に入っていた資料を中心に修復が進行しています。 |
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これらの植物標本は岩手県立博物館から、全国の博物館、大学などに送られ、脱塩、修復作業が行われています。ご協力いただいている博 物館等の数はなんと全国で30を超えます。全国の博物館・大学のみなさんに心から感謝しています。 |
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昆虫標本のレスキュー作業 |
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昆虫標本も植物標本同様に全国の博物館、大学に送られ、丁寧に処理が行われています。神経を使う細かい作業の連続で、修復がされて
行きます。 ルーペで脚の状況を観察し、折れ曲がりを直したり、小さい文字でラベルを書き直したりする作業が実施されました。 |
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北海道開拓記念館・開拓の森の学芸員さんたちによる応援 |
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北海道開拓記念館・開拓の森の学芸員さんたちが、石碑拓本の掛け軸の応急処置に来ていただきました。この掛け軸は、文字のある部分で ある「本紙」を外し、本格的に処理します。 |
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東京国立博物館の方々による応援 |
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掛け軸の現状調査、漆器の現状調査など今後の資料の保存に向けた作業を検討するために調査を行い、その結果を踏まえて、資料をどのよ
うに処理していくかが決まります。 |
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東京国立博物館による鉄製品の一次保存の技術指導 |
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陸前高田周辺は鉄生産と鉄製品の生産で有名な地域で、沢山の伝統的鉄製品が博物館に所蔵されていました。 鉄製品はすぐに全ての資料を完璧な保存処理工程に組み入れることが出来ないため、緊急避難的方法として、鉄製品と脱酸素剤をコンテナ に入れ、されにそのコンテナを空気の通らない特殊な透明袋に納め、鉄錆がこれ以上進行しないようにする対応をすることとしました。 東京国立博物館の方々からその作業のやり方について技術指導を受け、陸前高田で作業が実施できるようになりました。 特に、三菱ガス化学からは、たくさんの薬剤(RP剤)と透明袋(エスカル)の御寄付を頂きました。
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国立民族学博物館・国立歴史民俗博物館・日本博物館協会派遣チームによる民具の一次処理 |
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日本全国の博物館の学芸員さんたちがチームを作って、民具の泥や砂を払ったり、水洗いをする作業に取り組 まれました。 この作業は、1回あたりほぼ1週間の予定で数回行っていただきました。 |
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日本民俗建築学会による民具洗浄作業 |
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日本民俗建築学会の方々も、陸前高田に伝えられてきた民俗資料の被害を心配し、駆けつけてくださいました。 さまざまな形、構造を持った民具たちを丁寧に1点、1点洗浄していただきました。
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日本地質学会・日本古生物学会の応援 |
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全国的にも化石産地として有名な陸前高田の資料を救おうと全国の古生物学の研究者の方々が集結していただきました。
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博物館の屋外に展示してあった大きな化石を含む岩石も、地質学会のご支援により大型トラックを利用し、無事、移送することができまし
た。 |
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岡山理科大学・倉敷市立自然史博物館等による剥製標本のレスキュー
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陸前高田市立博物館には鳥類・哺乳類などのはく製が多く展示・収蔵されていました。 これらは壊滅的な被害を受けました。被災直後の状況を見る限りでは、「あきらめる」しかないのかと思いま した。しかし、20年以上も考古学や博物館のことで親交のあった岡山理科大学の富岡直人先生に陸前高田に来ていただき、その処理方法などをご相談したとこ ろ、先生は倉敷市立自然史博物館・山階鳥類研究所・(株)西尾製作所などに働きかけてくださり、多くの剥製標本が修復されつつあります。最後まで資料を残 すことをあきらめない。その一言につきます。 左の写真は、仮収蔵施設での被災剥製のリスト製作作業。種類や被災の状況によって分類し、山階鳥類研究所 等への移送がおこなわれました。 |
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被災2カ月後、岡山理科大学へ移送され荷ほどきされた直後の剥製類。水道水による水洗作業の実施状況です。 剥製は、繊細な構造のものが多いので、津波で首や脚が壊れてしまったものが多く、中にはガソリンまみれになってしまった標本もありま した。 これらを洗浄し、カビが発生した芯材は取り除き、防腐処理を施していきます。 |
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奇跡のアカショウビン 二度目の復活! |
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奇跡の復活を遂げ1200kmの道のりをトラックに乗せられ、帰って来たアカショウビン 。引き渡しの瞬間です。 アカショウビンは燃えるような赤色のクチバシと赤みを帯びた羽の色から「火の鳥」とも呼ばれますが、いち 早く修復を終え、不死鳥のように陸前高田に奇跡の復活を遂げたのです。 |
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このアカショウビンは、平成15年の夏に下矢作小学校(現矢作小学校)の体育館の窓ガラスにぶつかり、落鳥したものを、子供たちが発
見してかわいそうだからということでお墓を作って大事に葬ってくれたものです。それを見ていた用務員さんが博物館に連絡をくださり、子供達の了解をもらっ
てお墓を掘り起こし回収して、はく製にしたものです。 はく製が完成した時、博物館では真っ先に下矢作小学校の子供たちに見せてあげなければということで、移動展示を行い、アカショウビン の講話を行いました。すると、子供たちは、土日のたびに「おらほのアカショウビンいますか」と博物館に訪ねてきてくれました。中には野鳥に興味を持ち、観 察を始める子供まで出て来ました。
その私たちの思いを富岡先生はしっかりと受け止めてくださり、岡山への移送とクリーニングが実施され、(株)西尾製作所に丁寧な仕上 げをして頂き、倉敷市からは展示ケースの寄付も頂きました。 |
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山階鳥類研究所での修復作業 |
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山階鳥類研究所では、東日本大震災が鳥類に与えた深刻な被害をモニタリングする体制の確立という研究を、 岡山理科大学、陸前高田市立博物館と共同して進めています。 その中の一つのテーマに「陸前高田市立博物館の被災鳥類標本の修復」があります。その目的は、自然環境保 全の拠点であり、地域の文化の担い手でもある陸前高田市立博物館を支援するため、犠牲になった同館職員の遺志を継ぎ、彼らが長年にわたって収集・維持管理 に努めてきた所蔵鳥類標本の修復に取り組むというものです。この研究によって貴重な陸前高田のイヌワシなどの鳥類標本が復活しつつあります。 左はイヌワシのはく製の洗浄のようすです。 |
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新しい胴芯に針金を通し、羽や脚等に通しているようす。 |
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乾燥 | |||
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完成 | |||
全国の博物館・大学等でのレスキュー作業 |
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全国で展開されている陸前高田市立博物館・海と貝のミュージアムの資料のレスキュー作業は各博物館等の
ホームページで紹介されていますのでアドレスを紹介します。
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<植物標本のレスキュー>
北海道大学総合博物館 http://www.museum.hokudai.ac.jp/hide/rescue/
北海道大学植物園 http://doctorsnow.blog71.fc2.com/blog-entry-137.html
札幌市博物館活動センター http://sapporo.100miles.jp/smacstaff/article/379
岩手県立博物館 http://www.geocities.jp/curaiwt/rescue/botany.htm
山形県立博物館 http://www.yamagata-museum.jp/mujo820uk-1497/#_1497
国立科学博物館 http://www.kahaku.go.jp/userguide/hotnews/theme.php?id=0001311305304351&p=4
神奈川県立生命の星・地球博物館
http://nh.kanagawa-museum.jp/event/tokubetu/mini_2011nendo/201106_plant_rescue.html
神奈川県相模原市立博物館 http:
//www.remus.dti.ne.jp/~sagami/90-09-23mado-vounteer.htm#ボランティア230603
大阪市立自然史博物館 http://www.omnh.net/whatsnew/2011/05/post_62.html
徳島県立博物館 http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/ogawa/database/rikuzentakata/index.html
西日本自然史系博物館ネットワークhttp://www.naturemuseum.net/blog/2011/05/post_29.html
<昆虫標本のレスキュー>
北海道大学総合博物館 http://www.museum.hokudai.ac.jp/ohara/rikuzen/
千葉県立中央博物館 http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/news/news20110531.htm
兵庫県佐用町昆虫館 http://konchukan1.exblog.jp/16157795/
兵庫県伊丹市昆虫館 http://www.itakon.com/html/images/rikuzen.pdf
きしわだ自然資料館 http://kishibura.jp/blog/mama/2011/06/post-613.html
<貝類標本のレスキュー>
神奈川県遠藤貝類博物館 http://www.town-manazuru.jp/bunkazai_resukyuu
<鳥類剝製標本のレスキュー>
倉敷市立自然史博物館 http://www.freeml.com/kuranet/12498/latest
<美術品のレスキュー>
全国美術館会議 http://c110gjtc.securesites.net/topics/11/111006_3.htm111007
ここにご紹介したものは、ごくごく一部です。このほかにも多くの博物館・大学などで陸前高田市立博物館の資料をクリーニ ング、保存修復作業を行っていただいています。本当にありがとうございます。
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