岡山県高梁市(夏の都市気候マップ)

作成された気候マップの観測期間:2014年7月25日(固定観測)
                2014年8月21日、9月2日、9月9日(移動観測)

作成者:小川晃生・高市泰樹・大橋唯太(岡山理科大学大橋研究室)

公開論文等:岡山県の高梁盆地で暖候期に発生する高温化の気象観測 (小川晃生・高市泰樹・大橋唯太), Naturalistae, 2019, No.23, pp.1-14.

観測方法:固定観測では、公園内に放射避けを施したサーミスター温度計を設置した。
        観測地点数は全5カ所である。
     移動観測では、観測ポイント11地点を自転車で移動して気温を測定していった。


< 岡山県高梁市の位置> 
岡山県高梁市は、岡山県内で暖候期に日中の気温が最も高くなる地域として知られている。

     


< 移動観測ルートと固定観測点 >
        


< 固定観測からの気温マップ >



[ 解説 ]
ここでは典型的な夏の高温現象がみられた2014年7月25日を例に示すが、他の高温日も同様の特徴がみられている。高梁市街地(盆地)の中心部(中央や正宗)に限らず、日中の高温は北部の御殿坂と高梁川西岸の高梁アメダスでも確認できる。一方で市街地の南端は相対的に高温がみられにくく、また高梁川の橋上で最も高温がみられにくい。好天日には高梁アメダスで南西の風が観測されることが多く、瀬戸内海からの海風が午後には高梁まで到達している様子がうかがえる。この海風による冷却効果は、解析の結果からは不明瞭であった。


< 移動観測からの気温マップ >

全観測地点の平均気温からの偏差の値(℃)をマップとしてあらわした。
各図の左上にある数値は、全観測地点の平均気温を示す。





[ 解説 ]
いずれの日にも共通する特徴として、11時から15時までのあいだに高温域が高梁川の西岸から東岸へと移動している点である。このとき同時に、西岸や南のほうから低温域が時間とともに広がってきている。午後の高温域は領域平均した気温よりも1〜2℃は高く、場所も高梁市街地の建物密集地域に近い。

岡山県高梁市は、日本でも有数の高温地域である岐阜県多治見市や埼玉県熊谷市と共通して、標高が低い土地で内陸に位置している。このことは海風の到達が時間的に遅れることや、海風冷気が地表面からの加熱や暖気との混合によって冷気として侵入してきていないことが、暖候期の高温化につながる要因と考えられる。ただし、前述の多治見や熊谷ではフェーン現象の効果も特に重要といわれているが、本解析の高梁ではフェーンのケースはほとんど確認できなかった。

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