岡山県倉敷市(夏の都市気候マップ)

作成された気候マップの観測期間:夏期2009年7月21日〜9月18日(計60日間)

作成者:佐藤真由美・大橋唯太(岡山理科大学大橋研究室)

公開論文等:岡山県倉敷市における夏季ヒートアイランド現象の長期観測(佐藤真由美・大橋唯太),Naturalistae,2010,No.15,pp.23-30.

観測方法:公園内の樹木や街灯に放射避けを施したサーミスター温度計を設置した。観測地点数は全26カ所である。


< 観測場所の地図 >


< 観測地点(赤丸)> 枠線は1km間隔に引いてある





< 日中の暑さ >

真夏日(日最高気温が30℃以上)日数の分布


[ 解説 ]
観測60日間のうち、真夏日が最も多く記録されたのは観測地域北東部の倉敷市中庄付近で46日、反対に最も少なかったのはその西にあたる倉敷インターチェンジの倉敷市西坂・生坂付近で32日と、両者の日数には2週間もの差がみられた。1kmほどしか離れていない気候にここまでの違いが現れるのは興味深い。



< 夜間の暑さ >

熱帯夜(日最低気温が25℃以上)日数の分布


[ 解説 ]
熱帯夜が最も多く記録されたのはJR倉敷駅1km南の倉敷市南町付近で17日、最も少なかったのは観測地域北端の倉敷市西坂付近と南端の倉敷市吉岡付近で8日であった。その日数は2倍も違う。7km四方という、それほど広くない範囲であってもずいぶん夜間の気候が違うことにも驚く。



< 典型的な気温分布 >

気温偏差の分布(2009年8月17日7時〜18日5時の3時間ごと)

観測地域のどの場所の気温が高いかがわかるよう、観測地域全体の平均気温からのずれ(偏差)として値を示してある。図中の高梁川付近には観測点がほとんど存在しないため、この付近の結果には信頼性がないことに注意。



[ 解説 ]
日中(7〜17時)は、山陽自動車道倉敷インターチェンジ付近(倉敷市西坂・生坂)と観測地域南東部の国道2号線バイパス付近(倉敷市二日市・中帯江など)に、1〜2℃気温の低い場所がみられた。これらは田畑や丘陵地など、植生の被覆が他の場所に比べても目立つ地域である。建物や人間活動が集中するJR倉敷駅付近で気温は高くならず、むしろその周辺の低層住居地で気温のやや高い場所が散見される。つまり、倉敷の昼はヒートアイランド現象が出現していない。
一方の夜間は(20〜5時)、JR倉敷駅のすぐ南側(倉敷市阿知・中央・稲荷町など)に気温の高い場所が現れていた。図のなかでその様子が最も明瞭な時刻は20時であり、1〜2℃の高温が南西・北東方向へと帯状に広がる。20時以降は範囲が狭まるものの、高温が明け方まで持続していた。この一帯は商業地域・第一種住宅地域に相当し、周りに比べて高い建物が密集した人間活動も盛んな場所である。土地利用の分布と高温域の対応を考慮すれば、これが倉敷市のヒートアイランド現象と思われる。

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