1.「遺存体データベースからみた縄文・弥生時代生業構造 の変化」
 単著  1998年3月 『文部省科学研究費基盤研究(c)研究報告書』pp.1-16、付図版pp.1-19
 
 第1章で遺存体データベース研究の概要を記し、第2章で動植物遺存体の同定とデータベース化の意義を略述した。 第3章で動物遺存体にみる縄 文・弥生時代生業構造の変化を論じ、動物の形質的な変化がトレースできる可能性と、解体・処理方法に見るイノシシ類の文化的取り扱いの変化を詳述した。さ らに、形質学的研究とミトコンドリアDNAの比較研究が今後考古学研究で重要性を増していくことを示し、日本の周辺地域での研究の進展が、国内での家畜文 化研究の重要な鍵となることを論じた。
 
2.「藻塩焼神事考 −日本の伝統文化における塩の機能と 社会性」
 単著 2001年3月 『岡山理科大学紀 要. B, 人文・社会科学』 No.36(岡山理科大学):pp.39-47
 
 宮城県指定無形文化財の塩竃市御釜神社「藻塩焼神事」を取材し、これが古代・中世の塩水直煮製塩工程をうかがわせる復古的神事であることを論 じた。さらに先史時代以来、多くの製塩遺跡から検出される動物遺存体の特性を探るため、この神事で観察された軟体動物や節足動物、脊椎動物等の遺存体の内 容を記載し、遺跡出土資料との比較研究を通して論考した。さらに、塩が食用以外にも利用された可能性とその社会的意義を論究した。
 
3.「黎明期の日本考古学と科学教育」
 単著  2004年3月 
 『考古学研究会 50周年記念論集 文化の多様性と比較考古学』pp.417-426
 
 日本の近代考古学が欧米の科学を教育と研究に受け入れるプロセスで発達した背景に、江戸時代以来の国・漢・洋学の体系が存在し、その継承者と して相応しい研究者が「権威」として欧米科学の部分的移入を図り、日本的学風の創成に積極的に取り組んだ様相を、当時の文献資料や記録から論じた。さら に、このような日本的学風の延長上で、考古科学は差別的な研究を実施したことを検証した。日本の考古科学は、十分に正負の遺産を省みて、イノセントな科学 盲信の段階を脱却し、資料批判の意義を共有する、成熟した段階に歩みを進めるべきであることを指摘した。

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