カブトガニ (背面側、岡山県)
絶滅危惧種。岡山県笠岡市にわずかに生息しており、笠岡市カブトガニ博物館では市民の協力のもと、繁殖への取り組みが
盛んに実施されている。写真はカブトガニ博物館で養殖されたものの未成熟の状態(産卵前)で残念ながら死亡したメスの個体の写真。後にカブトガニ博物館で
は、この個体よりも成熟した個体を育て。産卵させる事に成功した。
背面には3カ所眼が存在する。上の写真でも右の強い稜線上に複眼。真ん中の稜線の先端に単眼が見える。
乾燥標本となったため、生体の黒みがかった色彩が失われてしまっている。
現在カブトガニは笠岡湾をはじめ、瀬戸内海のところどころに分布が知られている。瀬戸内海は更新世には陸化していたのであるが、完新世に縄文海進に従っ
て海水の流入がみられ、現在の海の状況に近い様子は6500年程前頃までに成立した。カブトガニは生きる化石であるが、この縄文時代に瀬戸内海に拡散して
いったと考えられる。ならば、瀬戸内海の遺跡で発見されて良いはずなのであるが・・・・。カブトガニは遺
跡から出土した例がまだない。カブトガニ博物館学芸員の惣路さんと動物考古学談義になると、いつもこの話題がのぼる。岡山周辺だけでも明治時代頃にカブト
ガニが分布していた範囲ははっきりしていない。古老への聞き取り調査はもちろん、遺跡での発見が研究の鍵を握っている。尾剣は断面三角形でかなり頑丈なこ
とから、出土するこ可能性は十分高い。
カブトガニ
腹面側。脚の真ん中に口がある。最も後ろの脚は、海底や干潟のやわらかい土壌を押さえつけて前進できるように放射状に
広がるようになっている。腹部にはエラがついているはず
なのだが、死亡した時に痛んでいたので、はずれてしまっている。残念!