岡山県岡山市(夏の都市気候マップ)

作成された気候マップの観測期間:夏期2008年7月31日〜9月7日 (計39日間)

作成者:重田祥範(立正大学;当時 岡山大学大学院)・大橋唯太(岡山理科大学大橋研究室)

公開論文等:細密な気象観測によるヒートアイランド強度の時空間的解析 −岡山市を対象にした例−(重田祥範・大橋唯太),天気,2009,Vol.56,No.6,pp.443-454.

Urban cool island in daytime −Analysis by using thermal image and air temperature measurements−(Yoshinori SHIGETA, Yukitaka OHASHI, and Osamu TSUKAMOTO),The 7th International Conference on Urban Climate (ICUC7),2009,Proceedings.

観測方法:公園内の街灯にラディエーションシールドを施したサーミスター温度計を設置した。観測地点数は全45カ所である。


< 観測場所の地図 >


< 観測地点(赤丸)>





< 日中の暑さ >

2008年8月に観測された日最高気温の月平均分布


[ 解説 ]
日最高気温は観測領域の南東部で低く、反対に南西部で高かった。その気温差は2℃以上も認められた。岡山地方気象台が位置する近辺やJR岡山駅周辺の気温はあまり高くなく、都市部が高温となるようなヒートアイランド現象はまったく見られない。また、南東部には低温な領域が確認できるが、これは児島湾と瀬戸内海から海風が冷気として侵入しやすいことによってもたらされたと考える。



< 夜間の暑さ >

2008年8月に観測された日最低気温の月平均分布


[ 解説 ]
夜間の最低気温からは、JR岡山駅とその南部に続く都市化進展範囲で気温の高いヒートアイランド現象が明瞭に出現していた。これは前述の日中の日最高気温分布とは大きく異なる。月平均でこれだけはっきり見られれば、ほぼ毎晩のようにヒートアイランドが発現していると考えられる。その気温差は1.5〜2℃であることが図からも読み取ることができる.



< 1日の気温差 >

2008年8月に観測された気温日較差の月平均分布


[ 解説 ]
一日の日最低気温と日最高気温の差(気温の日較差)を示す。日中と夜間の気温差の小さい地域は、JR岡山駅近辺の都市部と観測領域南東の沿岸部で明瞭に現れる。これは前述のとおり、南東の沿岸部では海風の冷気が日中の気温上昇を抑え、都市部ではヒートアイランド現象が夜間の気温低下を抑えている事実が関係する。ただし都市部は日中の気温も周辺地域に比べて上昇しにくいことも1日の気温差を小さくする要因として作用している。



< 典型的な気温分布 >

気温偏差の分布(2008年8月3日0時〜4日0時の3時間ごと)




[ 解説 ]
夜間(21〜3時)は、岡山市中心部から南方の商業地域にかけて気温が周辺部(郊外)よりも3℃以上高い様子が見られる。これが、岡山市のヒートアイランド現象だとわかる。しかし日中(9〜15時)は反対に、むしろ都市部の方が郊外よりも約1℃ほど低くなるように見えている。長期の連続観測からは、岡山市の夏季における気温分布は1日を通してこのような変化を繰り返していることが明らかとなった。



< 都市部で出現する日中の低温域 >

岡山市の都市部で出現する低温域の典型的分布(2008年8月11日午前10時)


[ 解説 ]
2008年8月11日は、典型的な夏の晴天条件であった.日照時間もこの月最長の10.8時間を記録している。図の10時には、JR岡山駅を中心として東西方向にやや伸びる低温域が出現している。この低温域に含まれる岡山地方気象台は、同時刻に31.8℃を記録した。しかしその周辺地域、特に南西部で気温はすでに33℃を超えていた。このように、都市部で気温の上昇が抑えられる要因として、高層建築物の密集化に伴う熱容量・日陰面積の増加があげられる。

前のページに戻る
Copyright 2006 Yukitaka Ohashi