 |
大規模霧の発生は予測できるか?
広島県の三次盆地で発生する大規模霧を前日に予測可能かどうか、気象観測から考えてみました。
三次盆地で発生する霧は放射霧で、盆地内の地表面の放射冷却が霧の発生にとって重要になります。


まず、国土交通省三次河川事務所によって撮影された28地点のライブカメラの画像を利用して、その場所の霧発生の有無を確認します。このとき、何時何分に霧が発生し、消滅したのかまで把握します。

その結果、上層から地表まで霧の層が広がった大規模霧の発生が観測期間中、何日間みられたかを明らかにすることができました。

次に、放射霧の発生に重要な地表面の放射冷却強度を算出しました。これには「最大可能冷却量」(近藤、菅原など)を利用し、観測した気象要素からその値を計算してみました。対象とした地点は盆地の北西口・作木地区、南西口・吉田地区、盆地内・甲田地区と三次地区です。


求めた最大可能冷却量と先述のライブカメラによって確認された霧の出現有無を対応させてみました。ただしこのとき、霧の予測という観点から、霧の発生時刻前である夕方時点での気象観測値から計算した最大可能冷却量を用いて、翌日朝における大規模霧の発生の有無と比較してみました。
その結果、最大可能冷却量の数値の出現頻度を調べてみると(ここでは全地点の平均値に対して)、10℃以上になれば大規模霧が翌日に発生していることが多いようでした。反対に、前日の最大可能冷却量が10℃に達しないときには、大規模霧は発生しないことが多いことが言えそうでした。

もちろん上述の関係が当てはまらない例外日も確認されました。前日に計算した最大可能冷却量が大きかったにもかかわらず霧が発生しなかった日は、湿数が大きい(大気が乾燥している)か、風速が大きい気象条件でした。一方、最大可能冷却量が小さかったにもかかわらず大規模霧が発生した日は、雨の影響などで湿数が小さくなっている(大気が湿潤であった)条件でした。

以上を踏まえて、大規模霧の発生予測を可能とする予測式を判別分析によって作成してみました。
このとき目的変数(質的変数)を霧の有・無とし、説明変数(量的変数)には最大可能冷却量・湿数・風速としました。
37日間の観測4地点における延べ148日分のデータを解析に用いました。
また、標準化判別係数の値からは、大規模霧の発生の有無には最大可能冷却量と湿数の寄与が大きいこともわかりました。

最後に、求めた判別関数の式がどのくらい霧の予測に使えそうか、的中率を求めてみました。その結果、80%を超える的中率が得られ、この研究で作成された大規模霧の発生の予測式、または判別分析による霧の予測が有効であると結論付けることができます。
今後は、他の盆地で発生する霧に対してもこれらが利用できるかどうか、調べることも課題です。

その他、三次盆地における霧の発生の様子などは、以下を参考にしてください。
理大の栞(しおり) その2 [霧] 解説
関連する学術論文
|