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[日本語の音韻]

五十音図
 日本語に使われる音韻は、全て仮名で表せる。基本は「五十音+ん」で、これに濁音「が、ざ、だ、ば、」行と半濁音「ぱ」行が付け加わる。
 更に、「きゃ、しゃ、ちゃ、にゃ、ひゃ、みゃ、りゃ」行と「ぎゃ、じゃ、びゃ」行があるが、これらには独立した仮名は無い。

 平仮名五十音図
  ん   わ   ら   や   ま   は   な   た   さ   か   あ   
      ゐ   り   い   み   ひ   に   ち   し   き   い   
      う   る   ゆ   む   ふ   ぬ   つ   す   く   う   
      ゑ   れ   え   め   へ   ね   て   せ   け   え   
      を   ろ   よ   も   ほ   の   と   そ   こ   お   
                   ぱ   ば       だ   ざ   が        
                    ぴ   び        ぢ   じ   ぎ        
                    ぷ   ぶ        づ   ず   ぐ        
                    ぺ   べ        で   ぜ   げ        
                    ぽ   ぼ        ど   ぞ   ご        

 五十音図では、縦列を「行」、横列を「段」と言う。
「か」行二段は「き」で、「な」行四段は「ね」である。数学や理科では横列を「行(=row)」、縦列を「列(=column)」と言うので注意。

 片仮名五十音図
  ン   ワ   ラ   ヤ   マ   ハ   ナ   タ   サ   カ   ア   
      ヰ   リ   イ   ミ   ヒ   ニ   チ   シ   キ   イ   
      ウ   ル   ユ   ム   フ   ヌ   ツ   ス   ク   ウ   
      ヱ   レ   エ   メ   ヘ   ネ   テ   セ   ケ   エ   
      ヲ   ロ   ヨ   モ   ホ   ノ   ト   ソ   コ   オ   
                  パ   バ       ダ   ザ   ガ       
                   ピ   ビ       ヂ   ジ   ギ       
                   プ   ブ       ヅ   ズ   グ       
                   ペ   ベ       デ   ゼ   ゲ       
                  ポ   ボ       ド   ゾ   ゴ       

いろは(以呂波)歌
 五十音中の各音を一つずつ使って詠んだ歌(「い、え、う」に重複があるので実際は四十七音)。成立は平安中期以前と目される。

       あ       う       わ       い   
   ゑ   さ   け   ゐ   つ   か   ち   ろ   
   ひ   き   ふ   の   ね   よ   り   は   
   も   ゆ   こ   お   な   た   ぬ   に   
   せ   め   え   く   ら   れ   る   ほ   
   す   み   て   や   む   そ   を   へ   
       し       ま               と   
       浅       有       我       色   
   酔   き   今   為   常   が   散   は   
   ひ   夢   日   の   な   世   り   匂   
   も   見   越   奥   ら   誰   ぬ   へ   
   せ   し   え   山   む   ぞ   る   ど   
   ず       て               を       

音韻
 五十音図に対応したRoma字表記(ヘボン式=英語式)は以下の通り。日本式表記だと、例えば「た」行は「ta ti tu te to」となるが、これを素直に発音すると「ti tu」が日本語の「ち、つ」の音にならず「ティ、トゥ」となる。現在の標準日本語はこのヘボン式Roma字の様に発音すると心得る事。

  n   wa   ra   ya   ma   ha   na   ta   sa   ka   a  
      wi   ri (y)i   mi   hi   ni   chi  shi  ki   i  
   (w)u   ru   yu   mu   Fu   nu   tsu  su   ku   u  
     we   re (y)e   me   he   ne   te   se   ke   e  
     wo   ro   yo   mo   ho   no   to   so   ko   o  
 「さ」行は、昔「sha shi shu she sho」であったが、今の標準語は「し」の音以外は詰まった発音になってしまった。 「は」行も、昔は「Fa Fi Fu Fe Fo」だったが、これも「ふ」を除いて変化した。「ふ」をhuと書く人がいるが、そういう人も先ず間違い無くFuと発音する。h音は喉の奥で出るが、F音は唇を軽く合わせている。
 各行で「あ」段の表記とずれがある段に注意。「や」行の「い、え」段の発音、「わ」行「う」段の発音は、随分昔に消失しているので対応する仮名がない。

  pa   ba       da   za     ga  
  pi   bi       zi   ji(zi) gi  
  pu   bu       zu   zu     gu  
  pe   be       de   ze     ge  
  po   bo       do   zo     go  
 単独仮名文字を持たぬ発音の、仮名ローマ字表記
 きゃ きゅ きょ 「kya kyu kyo」
 じゃ じゅ じぇ じょ 「ja ju je jo」
 びゃ びゅ びょ 「bya byu byo」
  その他、これに準じる。

 日本語は仮名文字と発音が一対一で対応しているので、仮名文字の発音に惑う事が無い(非常な利点)。例えば英語では、miの文字を「まい」と読むのか「み」と読むのか一義的に決まらない(mine, mineral)。
 (注)助詞の「は、へ」を、"wa, e" と発音するなど例外はある。「正假名遣ひ」では更に例外は多くなるが、それでも英語などに比べれば遥かに易しい。



 日本語の基本発音は「ローマ字五十音図」に示した通り。「あ い う え お」の五母音が基本。母音はこれだけしかない。口を大きく開け、形をしっかり作って発音すると聴きやすい。若者には口を開けず潜もった音を出す者が多いが、これは非常に聴き取りにくい。
 日本語の発音単位は「子音+母音」である。どんな言葉も一音一音が区別され、母音が明瞭に聞こえねばならない。ただし、長音は母音を伸ばして発音する。「若者」は「wa ka mo no」であり、「お早う御座います」は「o ha yo o go za i ma su」である。綺麗に発音するには、口をしっかり開け、ゆっくり喋る事は当然だが、特に語頭と語尾を意識して明瞭に発音するのが大事。
 「さ」行のおかしな人が増えた。特に、語尾の「す」が消える人がTVのアナウンサー(喋りの専門家の筈)にも見受けられる。「〜あります」「〜御座います」を「- a ri ma s」「- go za i ma s」と言う類いで、「〜ありま」「〜ございま」しか聞こえない。

 口を開けずに喋るのは、基本的に「相手に聞いて貰おう」と言う意識が乏しい所為である。
言葉遣い
「有る(ある)」と「無い(ない)」

 「ある」の反対語は「ない」
 「ある」を丁寧に言うには、「ます」という語を新たに付加し「あります」とする。もっと丁寧にするには、「ある」を「御座る」に変えた上で「御座います」とする。これの否定は「ありません」「御座いません」。 「ます」の部分に否定の「ぬ」が付いて、「ませぬ」となり音便化して「ません」となった。 一方、「ない」を丁寧にいう言い方は「ない」

 一般に動詞の否定には、「ない」を使う。
	使う→使わない 	行く→行かない 	居る→居ない

	来る→来ない 	する→しない 等
 これの丁寧表現は、
使います→使いません 行きます→行きません 居ます→居ません 来ます→来ません します→しません 等
 「ない」を丁寧にいう言い方は「ない」ので、否定の場合「ます」を否定した「ません」にする。


です

 「だ」「である」の丁寧表現 →「です」「であります」「で御座います」
 「です」は「だ」の変形であり、元々形容詞には付かない。助動詞「だ」か、形容動詞「〜だ」を丁寧に表現する時に使う。
	それは石だ→それは石です 	見事だ → 見事です 	綺麗だ→綺麗です

	美しい→美しいです(×) 	高い→高いです(×) 	有り難い→有り難いです(×)
 これらを丁寧に言うには、「美しい花です」「高い山です」「有り難い事です」の様に名詞をはさむか、言葉を変えて「綺麗です」の様にするか、「高いと思います」「有り難う御座います」の様にする。

 昨今、何にでも「です」を付けて丁寧に言った積もりになっているが、「です」は元々江戸方言「でげす」の「げ」が取れたもの(?)で、使われ始めた当初は眉をひそめる人が多かった表現である。言葉を言い換える事で使わずに済むのなら、それに越したことはない。「ない」には付かないので、否定の際は「ません」を使うのが良い。
	 無いです  (×)→ 有りません
	 使わないです(×)→ 使いません
	 行かないです(×)→ 行きません
	 食べないです(×)→ 食べません 等


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