ミカンと気象                         

カンキツ果樹を対象とした冬季寒害リスクの数値シミュレーション

数値気象モデルを利用した、冬季の寒波襲来に伴うカンキツ寒害リスクのマップを作成しました。


      

計算対象領域は、かんきつ類栽培のさかんな、しまなみ島嶼部(その1)、愛媛県八幡浜地域(その2)、愛媛県宇和島地域(その3)です。上の図では例として、宇和島領域を示してあります。




上の図では例として、宇和島領域のなかで御荘という地域の平野部を含むエリアに限った結果を示しています。右下には予想される樹園地の分布、右上にはモデル子領域d02(200m解像度)で計算された-2℃以下の低温記録時間マップ、左上にはその-2℃以下の低温記録時間とモデル格子の標高との関係を示してあります。
右下の図から、カンキツ樹園地はアメダスよりも標高が高い場所(小さな丘陵地や谷筋)に分布している様子がわかります。気象モデルによる数値シミュレーションの結果では、樹園地が存在する地域は、アメダスのある平野部よりも-2℃以下の低温記録時間が7時間以上と、急増しています(右上・左上図)。


計算された-2℃以下の低温記録時間と標高の関係を、しまなみ領域の大三島エリア、八幡浜領域の八幡浜エリア、宇和島領域の御荘エリアの全格子点について示してあります。アメダスを含むモデル格子は標高が十数m程度で低いが、国土地理院の国土数値情報から判別した樹園地は、おおむね標高100mまで分布していることがわかりました。御荘エリアと八幡浜エリアの低温記録時間は、標高が高い格子点ほどアメダス格子点の低温時間よりも大きく増え、標高100m以下で限定しても2倍の10〜12時間近くにまで達するモデル格子もみられました。ところが大三島エリアでは、標高が高くなっても御荘や八幡浜ほど低温時間が顕著に長くなる傾向はみられません。
また、御荘・八幡浜と大三島を同じ標高で比べてみると、大三島エリアの低温時間のほうが御荘・八幡浜よりも明らかに長い特徴が、特に標高100m以下のモデルグリッドに対してみられました。御荘エリアで4〜8時間、八幡浜エリアで6〜10時間の低温記録時間が多いのに対して、大三島では12〜16時間の低温時間が多くなっていました。この結果からも、しまなみ領域のある瀬戸内海の低温傾向が確認できます。


関連する公表論文

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  Advances in Science and Research, Special Issue on 18th EMS Annual Meeting: European Conference for Applied Meteorology and Climatology 2018, Vol.16, pp.1-6.

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