関西プロジェクト                       

地上気温のシミュレーション

観測期間を対象に,アメリカで開発されたメソスケール気象モデルWRF(Weather Research and Forecasting Model)を使って気象場のシミュレーションをしてみました.
その一例である,地上気温を下に示しています.観測期間中の時刻別気温の計算値を平均して作成した図です.



大気カラム

今度は大気カラム(格子ごとの地表から上端まで含む柱状の大気領域)で出入りする熱量を見てみます.すると,大都市の大阪よりも内陸の枚方市や京都といった地域のほうで大気への蓄熱量が大きくなっており,朝からこの地域の気温が上がりやすい原因になっています.

 


実際に,関西地域の夏季最高気温は枚方市や京都で出現しやすいです.この地域で熱が溜まりやすいのは,山に囲まれた狭い谷状の地形になっており,朝からの局地的な大気循環(谷風)の出現が原因だということが数値実験の結果から考えられます.
数値実験の結果からは,大気循環がもたらす蓄熱が気温を決めている割合は,大阪で10%に対して,枚方市では45%,京都では35%にものぼることがわかりました.

野外での気象観測は,その性質上,どうしても時間的にも空間的にも不連続なデータしか得られませんが,数値シミュレーションでは時間的にも空間的にも連続したデータを得ることができるため,気象現象の立体構造を知ることができます.       
また,様々な仮想実験(山をなくしたり,土地分布を変えたりなど)ができるため,現象の物理メカニズムを明らかにすることも可能なわけです.

※ 図は,ゼミ生(4期生)の根雄也氏によって作成されたものです.



関連する公表論文

Yuya TAKANE, Yukitaka OHASHI, Hiroyuki KUSAKA, Yoshinori SHIGETA, and Yukihiro KIKEGAWA,2013
   : Effects of synoptic-scale wind under the typical summer pressure pattern on the mesoscale high-temperature events in the Osaka and Kyoto urban areas in Japan by the WRF model.
  Journal of Applied Meteorology and Climatology, Vol.52, Issue 8 August, pp.1764-1778.
Yukihiro KIKEGAWA, Ai TANAKA, Yukitaka OHASHI, Tomohiko IHARA, and Yoshinori SHIGETA,2014
   : Observed and simulated sensitivities of summertime urban surface air temperatures to anthropogenic heat in downtown areas of two Japanese major cities Tokyo and Osaka.
  Theoretical and Applied Climatology, Vol.117, Issue 1-2 July, pp.175-193.

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