別府の濃霧                         

別府湾周辺で発生する濃霧の数値シミュレーション

2020年5月3日から4日にかけて発生した濃霧を対象に、気象モデルによる数値シミュレーションをおこないました。この両日に、別府を走る高速道路で実際に速度規制・通行止めが長時間発生していました。下の図は、シミュレーションの結果ですが、別府湾の西側にある山地(破線の赤円)で霧が発生しています。※ 色が霧水量、矢印が風ベクトル。



      

上の図は、別府湾を横切る東西方向の高度断面図です。図の左(西)側には、別府湾に隣接する急斜面の山があります。※ 色が視程(m)、矢印が風ベクトル。
山を滑昇する風の発生とともに霧が山の斜面上で形成され、視程が悪化している様子がわかります。別府湾の地上では山に向かう東風であるのに対して、上空ではこのとき西風となっているため、鉛直方向の大きな循環が作られているのが、とても興味深い点です(特に図c)。これによって別府湾の上空にまで濃霧が張り出している様子がわかります。こういった特徴は観測では捉えにくく、気象モデルによる数値シミュレーションで初めて明らかとなりました。



数値シミュレーションでは、濃霧に対する山の高さの効果や海面温度の影響など、いくつかの数値実験をおこないました。上の図は、現段階で明らかとなった別府での濃霧発生のメカニズムを模式図として示したものです。数値シミュレーションからは、この地域の濃霧が、別府湾方向から流入してくる暖湿気流が山を滑昇する際に発生することが明らかとなりました。特に視程が100mを切る濃霧は、(山斜面を這い上がる)強制上昇による空気の飽和現象が地表付近で起こることで生じており、地表面の放射冷却で発生する放射霧とは霧の特徴も大きく異なることも、新たにわかりました。


関連する公表論文

Yukitaka OHASHI and Makoto SUIDO, 2021
   : Numerical simulations of upslope fog observed at Beppu Bay in Oita Prefecture, Japan.
  Meteorological Applications, Vol.28, Issue 3, open access.

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